最近になっていきなり表面化した感のある「老後資金不足問題」。おそらく多くの人にとっては、「そんなこと、今さら言われなくたって十分に想像していた」というところでしょう。ただ、その額面が2000万円と現実味のある数字で具体化されたことで、不安が煽られたのだと思います。

 しかしながら、あの資料の元になっている無職高齢者の家庭の収入と支出の試算は、総務省の家計調査報告で定期的に行われており、これまでもとくに隠されていたわけではありません。ファイナンシャルプランナーが老後問題を取り上げる時などもさかんに利用されていて、知っている人はとっくに知っていました。もしかしたら、あなたもその一人かもしれません。しかし知っていたからと言って不安が払拭されるものでもありません。100歳まで生きる時代が目の前に迫っており、問題はより深刻になっていると言えます。

 とくに、マネジャー職として働き盛りにある世代は、家のローンや子供の教育費にお金がかかり、なかなか貯蓄には回せません。2000万円だの3000万円だのと言われても「どうしていいか分からない」というのが本音でしょう。

 ある生活資材メーカーに勤める40代の男性は、「深く考えるのをやめている」と述べていました。「具体的に考えれば考えるほど気が重くなってしまうし、そもそも今から自分の老後など想像できない」というのです。

 たしかに、この男性が何歳まで生きるのか誰にも予見できません。元気に100歳まで人生をまっとうするかもしれないし、残念ながら壮年期に病に倒れてしまう可能性もあります。同年代の妻も同様です。

 また、2人の子供が将来どうなるかも分かりません。もしかしたらビジネスで大成功を収めるかもしれないし、いつまでも親に寄生した生活を送ろうとするかもしれません。

 考えてみると、人生は非常に不確定なものなのです。にもかかわらず、いかにもステレオタイプなサンプルを当てはめて計算した金額を元に右往左往するのは得策ではありません。

 では、この男性のように「深く考えるのをやめる」のがいいかといえばそれも違います。

 不安というのは、漠然と持ち続けることによってどんどん増幅していきます。その不安の中身を分解し整理し、見える化してしまうと、ずいぶん小さくなるのです。

 たとえば私の仕事で、クライアントとの約束の期日までに提出すべき資料作成が間に合わないのではないかと感じることがあります。もちろん、不安です。そういう時は、完成までのロードマップを洗い出し、現在、どの地点にいるのかを明確にしたうえで、しなければならないことを残された日程に細かく振り分けていきます。すると、「大変ではあるけれど、具体的にこの作業を行えば間に合う」と分かり、不安は消えます。そして、不安が消えるだけでなく、実際に間に合うのです。

 あなたが自分の老後資金について不安があるなら、徹底的にそれと向き合ってしまいましょう。あなたにとって、とくに不安なのはどんな点でしょうか。そもそも、国の調査報告で示されている「食費」「光熱費」「教養娯楽費」などの分類が、あなたの生活の在り方に則しているでしょうか。