石田 淳
株式会社ウィルPMインターナショナル 代表取締役社長兼最高経営責任者

 地元の商店街で長く酒屋を営んできたK氏は、2年前から店の経営を30代後半の息子にまかせています。近所の大型ディスカウント店に押され、一時は倒産も覚悟したのが、息子が手伝うようになって売り上げが回復してきたからです。

 息子はかつて百貨店に勤務しており、父親の店を継ぐと決めてから、退職して半年ほど世界中を旅してきました。旅先では、もっぱらワインやウイスキーについて、店舗でどう売られ、飲食店でどう飲まれているかを見てきました。

 さらに、帰国後は、国内各地の小さな酒造メーカーをこまめに訪ねています。

 そうした知識を元に、息子はまず店のレイアウトを変えました。

 父親は単純にお酒の種類や値段別に、商品を棚に並べているだけでしたが、ヨーロッパの都市のしゃれたショップを参考に大胆に変え、入り口近くのスペースには特設コーナーを設けました。そこには、週替わりでオススメ商品を置くようにし、より美味しい飲み方や、食事との相性について説明書きを添えました。

 奥の方の棚も刷新し、買う商品を決めていないお客さんが、楽しく見て回れるようにしました。これまで、自分たちの都合による「商品置き場」に近かった棚を、お酒好きの人たちが「寄ってみたくなる場」に変えたのです。

 こうした試みが功を奏し、ディスカウント店では得られないお酒の知識を求めた質の高いお客さんが増えていきました。

 言ってみれば、息子のクリエイティビティが店を救ったわけです。

目の前の仕事に追われてインプットをおろそかにする危険性

 これからの時代、クリエイティビティが問われない仕事などありません。商品の企画部門などは言うまでもなく、営業も同様です。誰に対してもひたすら商品説明をしていくプッシュ型の営業はもはや通用せず、顧客一人ひとりのニーズを見極めた提案型営業が求められています。

 しかしながら、そのクリエイティビティとは、決して「生まれながら」のものではありません。実は、クリエイティブな仕事で成果を上げている人たちを調べてみると、そうではない人たちに比べて圧倒的に読書量が多いことがわかっています。