石田 淳
株式会社ウィルPMインターナショナル 代表取締役社長兼最高経営責任者

 かつて飛ぶ鳥を落とす勢いだった日本の大メーカーの凋落を見ていると、「成功することの怖さ」を感じずにはいられません。

 1980年代、ソニーは「1人用かつ再生専用のテープレコーダー」という全く新しい概念の商品、ウォークマンを世に出しました。発売当初こそ苦戦したものの、瞬く間に世界的な大ヒット商品となり、ソニーは目覚ましい成長を遂げました。

 今、50代、60代の日本人の多くは、その様子を目の当たりにしてきたため、iPhoneをはじめとするアップル社の商品を見て、「本当だったら、ソニーにできたはずなのに」と嘆きます。当時は、「ソニーはこれからも斬新な商品を生み出し、世界をリードする企業であり続けるに違いない」と思っていたのです。

 しかし、実際はそうではありませんでした。今振り返ってみれば、あの大成功の瞬間に、ウォークマンを過去のものとして否定するような商品開発に挑まなければならなかったのですが、ソニーはそれをしませんでした。

 一時期、大きな成功を手にすると、それに囚われ、新しい一手を打つ機会を失ってしまうのかもしれません。

成功体験が邪魔になる時代に

 こうした失敗は企業に限ったことではありません。一人ひとりのビジネスもまた、成功によって足を引っ張られることがあります。私たちが忘れてはならないのは、どれほどの成功であっても、それは1秒後には「過去の出来事」なのだということです。

 あなたが何か成功を遂げたならば、それ自体は大変に喜ばしいことです。また、ネガティブな気分に陥っている時には、過去の成功体験を思い出して自分を鼓舞することも必要でしょう。しかし、それに引きずられてはいけません。

 特に、変化の多い時代には、成功体験などかえって邪魔になる可能性が高いのです。ひとつ成功を収めたら、大いに喜んだ後はさっさと忘れ去るくらいでいましょう。そういう姿勢は、若い部下たちからも支持されるでしょう。彼らにとって望ましい上司は、「ひとつの成功体験をいつまでも語っている人」ではありません。

 それに何より、あなたの20年後、30年後のために、成功体験への執着は捨てるべきです。