部品メーカーに勤める40代の管理職A氏は、若い社員に残業を振ることが怖くなっています。というのも、数カ月前に苦い経験をしたからです。

 A氏は「早く仕事を覚えたいので、残業もいといません」と張り切っていた新入社員のB君に、ある日の夕方になって「週末の会議で使えそうな資料を探して、今日中にまとめておいてくれないか」と頼みました。

 ところが、B君は「ちょっと無理です」と断ってきました。かといって、何かほかの予定が入っているわけでもなさそうです。「なぜ無理だと決めてしまうの?」と聞いてみると、「かなり時間が必要ですから」という返事が返ってきました。

 しかし、A氏が求めているのはあくまで材料レベルですし、むしろB君の勉強になればと思ってのことです。そこで、「完璧を目指さなくていいよ。3時間程度でできるところまでで十分だよ」と伝えました。すると、そこで大きなすれ違いが露呈しました。B君の考えていた残業許容時間は1時間だったのです。

 「残業をいとわない」と言っておきながら1時間?

 このコントのような出来事は、A氏を戸惑わせるに十分でした。

 これはB君が特殊なのではありません。「残業しても1時間が限度」と考える若者は多いのです。

 ここで、「ヤツらはやる気がない」と断じてはいけません。彼らはやる気はあるのです。やる気があるからこそ「1時間くらいなら残業してもいい」と考えているわけです。「やる気があるなら終電まで頑張るはずだ」というのは通用しません。マネジャー世代と新人世代では残業に対する捉え方が遺伝子レベルで違うのだと考えた方がいいでしょう。

 働き方改革の後押しもあり、残業を減らす流れは止まりません。本来であればマネジャー世代もその流れに乗らなければいけないのですが、ベクトルがまったく逆の方向に向いてしまっている現場が多く存在します。

 典型的な例が「部下を定時で帰らせるために、上司の仕事が増えた」というものでしょう。

 人材派遣業でマネジャー職を務めるC氏は、これまで部下たちが残業して片づけていた業務を全部、自分が引き受けることになったために、ほぼ毎日、終電ギリギリまで働いています。

 「その日の記録をまとめ、翌朝までにクライアントにメールで報告しなければならないのです。この仕事を省くわけにはいきません」

 これがC氏の言い分です。

 このように、タイムリミットが設けられている業務、就業時間外に行わなければならない業務がある場合、部下に残業をさせないでいようとしたら、どうしても上司がそれを背負うことになってしまいます。