石田 淳
株式会社ウィルPMインターナショナル 代表取締役社長兼最高経営責任者

 ある出版社では、数年前に従業員の採用形態を大きく変えました。

 インターネットの発展により、「もはや紙の時代ではない」と言われて久しいですが、いまも出版業界は就職を控えた大学生に高い人気があります。その出版社にも、一流大学の学生たちから多くのエントリーがあります。しかし、最近は経験者の中途採用を重視し、新卒はごく数名しか採用しないそうです。

 というのも、一流大学を卒業し、かつ狭き門の就職試験を勝ち抜いてきた「ぴかぴかの」新人たちは、学力はあっても仕事の能力が高いとは限らないからです。

 いくら立派な企画書がつくれても、著者に依頼の電話をかけ、面談し、執筆してもらうまでには、自分の予想とは違うことが次々に起こります。締め切りを守ってもらえないなど当たり前。気難しい著者にいきなり怒鳴りつけられたり、そもそも電話口に出てもらえないことさえあります。それでもへこたれることなく粘り強く交渉し、いつの間にか著者の信頼を得てくるようなタイプは、高学歴者には少ないのだそうです。

 あなたの周囲を見渡しても同様だと思いますが、いわゆる知能指数が高い人が、社会的に活躍できるかといったらそうではありません。

 人の能力には認知能力(Cognitive skill)と非認知能力(Non Cognitive skill)があり、往々にして仕事の成果は非認知能力によるところが大きいのです。

 非認知能力とは、一般知能(IQ)とは関係のない、粘り強さ、協調性、やり抜く力、自制心、感謝する力といった類のものです。

 ある小さな輸入代理業の経営者は、企業規模が小さいため、最初から従業員に学歴は求めません。その代わり「語学堪能な人」を最優先に採用していました。しかし、最近はそれもやめて、中学・高校を通してひとつのスポーツに打ち込んできたようなタイプを歓迎するようになったそうです。彼らは非認知能力が高いからです。

 「語学堪能な人に仕事の進め方などについて注意をしてもなかなか改善しようとしないけれど、非認知能力が高い人たちは仕事の基本はすぐ覚えるし、最初はカタコトの英語でも、やっているうちに必要最低限はしゃべれるようになるんです」