石田 淳
株式会社ウィルPMインターナショナル 代表取締役社長兼最高経営責任者

 今、幅広い年代で登山を楽しむ人が増えています。一昔前まで、登山は「山男」と呼ばれるような頑強な肉体の持ち主でなければできないイメージがありました。ところが、軽くて高性能な道具類が誕生し、登山に関する情報が行きわたるようになると、これまで運動とは無縁だった人たちでも高い山に登ることが可能になってきました。

 実際に、60代になって登山を始めた小柄な女性が、標高3000メートルを超える北岳に登頂したなどという話をよく耳にします。その一方で、600メートル程度の高尾山でくたくたになってしまう若い男性もいます。

 その違いはどこにあるのでしょう。決して、やる気や根性ではありません。単純に、「登山に必要な正しい習慣が身についているかどうか」の問題なのです。

 登山者の増加に合わせて、旅行社やスポーツ用品店が、いわゆる「登山教室」を開催する機会も増えています。そこでは、正しい足運びや息が上がらない呼吸といったテクニックから、それらをしっかり身につけるためのトレーニング法などが教えられます。トレーニングといってもハードなものではなく、ストレッチや簡単な筋トレです。

 60代で始めた登山で北岳に登頂できる人は、日々の生活の中に、そうしたトレーニングを取り入れることに成功しているだけです。いくら高いお金を支払って、有名な登山家のレクチャーを受けたとしても、そのときだけで満足していたらダメなのです。

 ビジネスに関しても、同じようなことがいえます。大企業を中心に、さまざまな社員研修が行われていますが、それがどの程度、結果に結びついているでしょう。私が見る限り、ムダなお金と時間を費やしているだけのところが多いようです。

 たとえば、教育資材の販売を手がけるA社では、営業部門の社員を対象に、毎年、温泉地で泊まり込みの研修を行っています。ここ数年、結果が出せずにモチベーションが下がり、若い営業スタッフが辞めてしまうことが続いているからです。

 人事担当者も含めれば20名ほどの宿泊代や交通費が必要になり、研修費と合わせて相当な出費になります。それでも、研修後しばらくは従業員に高揚感が生まれ、発言も行動も前向きになります。だから、「やったかいがあった」とそのときは思えます。ところが、相変わらず営業成果にはつながりにくく、辞める人が後を絶ちません。そしてまた、1年後に同じことを繰り返すのです。