欧米に比べ日本企業は雇用の流動性が低く、それがイノベーションを妨げる原因として問題視される傾向が長く続きました。一方で、雇用の流動性が高くなったからといって企業の業績が伸びるわけではないという意見も見られます。

 その是非はさておいて、最近は日本企業でも雇用の流動化が進んでいることは間違いありません。

 トヨタ自動車社長の豊田章男氏が「終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と発言し、話題を呼びました。トヨタですらそうなのですから、中小企業ではとっくに終身雇用は過去の話になっています。そして、こうした動きは、企業側から起きているというよりはむしろ、従業員のニーズがそうさせているのです。

 私自身、クライアント企業の採用現場を見ると、雇用の流動化が劇的に進行していることを痛感しています。「募集をかけても誰も来ない」と嘆いていた多くの企業で、たくさんの応募者が見られるようになったのです。

 というと聞こえがいいですが、つまり辞めている人も多いということ。人材不足という悩みから企業が解放されたわけではありません。

 とくに人が動くのが長期休暇明け。今年のGWの後も、お盆休みの後も、それが顕著でした。おそらく、休み中に帰省した若者が、友人たちと会い、お互いの仕事の話になり、自分の職場の短所を認識して転職を考えるのでしょう。あるいは、「長く休んでしまったら出社するのが嫌になった」という心理的側面もあるかもしれません。

 いずれにしても今後は、雇用の流動性はより高くなっていきます。そういう時代に、あなたのビジネスを確実に成長させていくためには、人に仕事をつけるメンバーシップ型雇用から、仕事に人をつけるジョブ型雇用への移行が不可欠です。

 しかし、従業員はロボットではなく心を持った人間です。いくらジョブ型に変えていっても、上司のマネジメント能力は欠かせません。むしろ、ジョブ型でビジネスを展開するならなおさら、部下一人ひとりの動機づけ条件に敏感になる必要があるのです。

 ただ、なかなかそれが難しい。本当に部下の動機づけ条件の方法を理解している上司が少ないからこそ、雇用の流動化が加速しているとも言えるわけです。

 ある資材メーカーで課長職を務めるA氏は、6人の部下たちの個別の動機づけ条件はしっかり把握しているつもりでした。だから、9月に入って2人の退職者を出した時には大変なショックを受けたようです。

 A氏は普段から「1on1ミーティング」を頻繁に行い、部下たちとの意思疎通を図ってきました。しかし、こうしたミーティングは、上司の自己満足に終わってしまうことが多いのです。