石田 淳
株式会社ウィルPMインターナショナル 代表取締役社長兼最高経営責任者

 「なんで、あんなヤツを褒めなくちゃならないのか。ホント、バカらしくなりますよ」

 大手メーカーに勤める課長の口から、こんなグチが飛び出しました。本連載でもたびたび取り上げていますが、部下を褒めることに苦労している上司は多いのです。課長世代が上手に部下を褒められない理由は、大きく2つあると私は考えています。

 1つは、自分たちが褒められてきていないから。いまの課長の上司にあたる人たちの多くは、「叱ってこそ部下は伸びる」と考えて、それを実践してきました。だから、課長たちは「どうやって褒めたらいいのか」がわからないのです。

 もう1つの理由は、「褒めるほどの部下ではない」と感じていることです。

 冒頭のグチをこぼした課長は、自分の部下の1人について、「仕事もたいしてできないくせに、口ばかり達者で腹立たしい」という不満を抱いています。

部下を褒めるのがよい明確な理由

 いま、「部下をどう褒めるか」という技術論については、いろいろ本も出ているし、セミナーなども行われており、そういうものからの学びもあるでしょう。むしろ、課長たちを苦しめているのは、後者の理由、すなわち「なんで、こいつを褒めなくちゃならないのか」という思いなのかもしれません。

 その「なんで」について、私は明確に答えることができます。「それによって、あなたの仕事がラクになるからです」と。

 行動科学マネジメントにおける「部下を褒める」は、部下そのものを褒めることではありません。部下がとった行動について褒めます。というのも、部下が望ましい行動をとったときにすかさず褒めれば、部下はその行動を繰り返してくれる可能性が高いからです。
「いまの電話対応よかったね。言葉づかいが適切だった」
「今日は5件も営業に回ったようだね。その調子だよ」
「提出してくれた資料、データの出典がきちんと示されていたね。大事なことだよ」

 このように、望ましい行動について具体的に褒めることで、「これはいい行動なんだ」と部下にインプットしてもらい、今後もその行動を続けてもらうことが目的です。

 部下の人間性に言及しているのではないし、ヨイショをするわけでもありません。仕事を的確に回すために褒めるのであって、感情的なものとは切り離して考えるべきです。