日本のビジネスの現場でも、「つながらない権利」について注目されています。休暇中はもちろんのこと、会社を出た後など勤務時間外には、会社からの電話やメールに対応しない権利が従業員にあるということです。

 日本経済新聞の記事(2018年10月29日付)によれば、フランスやイタリアではすでに法令化されているこの案件が、アメリカのニューヨーク市でも条例審議に入ったということでした。

 日本より従業員の権利意識が高いと思われるアメリカですが、2016年にバージニア工科大学などのチームが様々な業界で働く約600人を調査したところ、時間外のメール対応が平均して週8時間に及んだそうです。また、米国旅行産業協会が行った調査では、在宅勤務などを行うリモートワーカーの7割が、休暇中もメールに対応していることが明らかになりました。

 かつてのアナログな社会であれば、勤務時間外にどれほど緊急な事態が起きても、せいぜい自宅の固定電話に連絡が入るくらいでした。それだって、留守にしていれば受けようもありませんでした。結果的に、「つながらない権利」は守られていたわけです。

 しかし、仕事のデジタル化の進化と共に従業員はいつでもどこでも会社とつながってしまいます。それは、会社にとっては便利な一面があることはたしかですが、つながらされている方は大きなストレスとなります。

 そういう状況から従業員を守るために、「つながらない権利」の条例化は今後、世界的に進んでいくことと思われます。

 教育資材の営業を主体に行っているA社では、携帯電話を使っての勤務時間外の連絡が当たり前になっていました。すでに家でくつろいでいる部下に、「○○の件どうなっている?」「××社から電話が来たから折り返しておいてよ」などと、上司からたびたび電話が入るのです。

 20代後半のB氏は、この上司のやり方に不満がありましたが、それでも、時には着信に気づかなかったふりをすることで、ほどほどにやり過ごしてきました。

 ところが、3カ月前に営業部メンバーでのグループLINEが導入されたことで、本気で退社を考えるようになったといいます。

 そのグループLINEの計画は、上司主導で進められました。バラバラに行動している営業メンバーが、一定のタイミングで報告を入れ合うことで、お互いの行動が把握でき、ムダな行き違いなどを防ぐというのが上司の主張でした。

 しかし、当初こそ、午前11事前後と午後4時前後という「一定のタイミング」が守られていたものの、やがて、休日にも上司からの連絡が来るようになりました。

 さすがに既読スルーするわけにもいかず、簡単なコメントを返してはいますが、そのたびに理不尽な思いに襲われるようになりました。