糖尿病について

 ストレスが原因で分泌が増えるストレスホルモンと呼ばれるものは、どれも、血糖値を上昇させる作用があります。単に食べ過ぎや運動不足だけでなくストレスも糖尿病を悪化させます。

 糖尿病学会では合併症を予防するために、適切な血糖管理の目標値としてHbA1c(NGSP)7.0%未満を提唱しています。この目標値を意識していくことで、後に合併症として起こり得る透析や失明、手足の切断などのリスクを下げることができます。本人の健康維持、会社としての人材確保に効果的なだけでなく、健康保険組合の財政にも大きく寄与します。

 従ってこの目標値を大きく上回る従業員に対しては、「治療が必要な糖尿病であること」「病気のコントロールがうまくできていないこと」の自覚を促すと共に、改善に向けた勇気づけを行いながら、ストレス緩和の必要性があるのかどうか、人事部としてリスク評価と健康管理を行っていく必要があります。もちろん、産業医や保健師の力を借りてください。

複合的なリスク判断という考え方

 「リスク、リスク」と物騒な言葉ばかり繰り返して申しわけないのですが、内科医が生活習慣病を治療していくうえで考えるのが、リスク因子の数です。例えば、血圧が160/100mmHg以上、180/110mmHg未満の場合も、糖尿病を合併していれば、180/110mmHg以上と同様に高リスクと考えます。

 コレステロールについても、糖尿病がある場合はLDLコレステロール120mg/dL以上で高リスクと判定され、生活習慣の改善で、目標に達しなければ投薬治療の対象になります。このように、いわゆるメタボの積み重なりは相乗的に健康リスクを高めていくため、「おなかが今年もひと周り大きくなった!」「メタボだなぁ」と職場でネタにしている場合ではありません。特に糖尿病やその予備軍である耐糖能異常は動脈硬化を殊に促進して、著しく健康リスクを高めてしまいます。心と体はつながっていて切り離せないものです。

 メンタルの病気だけでなく、ストレスからくる体の病気にも注意を向けて健康管理対策を実行していきましょう。

著者:石井 聡
九段下駅前ココクリニック
監修:石井 りな
フェミナス産業医・労働衛生コンサルタント事務所、(株)プロヘルス代表
石井 りな(いしい・りな) 精神科専門医、産業医 / フェミナス産業医事務所、株式会社プロヘルス 代表
石井 りな

 千葉大学医学部卒。総合病院にて研修後、精神科病院や精神科クリニックに勤務。並行してうつ病リワーク施設や企業向けメンタルヘルス支援機関を経験。精神分析・力動的精神療法、認知行動療法などの精神療法も学ぶ。診療や企業での経験を通じて、従業員の健康対策は企業の生産性を高めるうえで必要不可欠だと確信。「健やかに活き活きと仕事に挑戦し続けられる社会」を目指し、精神科産業医の立場から企業を支援したいと思い、女性医師を中心にフェミナス産業医事務所を設立。現在、多くの企業で産業医として活動する傍ら、大学で費用対効果の高いメンタルヘルス対策についての研究も行っている。
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※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。