しばらく連載をお休みし、ご迷惑をおかけしました。第3子の妊娠が分かった喜びも束の間、ひどい吐き気に見舞われ、なかなか落ち着いて筆を執ることができませんでした。申し訳ありません。私は、過去の妊娠でもつわりが強いタイプで、妊娠回数を重ねるたびにひどくなる傾向があるようです。今回も、ピーク時には点滴のお世話になりました。

 私の場合、労働者としての妊娠経験、弊所スタッフが妊娠した際の事業者(管理監督者)としての経験、そして、企業の産業医として妊産婦労働者の健康管理指導経験があります。こうした様々な立場での経験も参考に、社員が妊娠した場合の会社が取るべき対応について考えていきます。

 クライアントには女性が活躍している企業が多いこともあり、昨年は、妊産婦労働者の対応についてのケース相談が多い1年間でした。これまでは対象となる社員からは体調不良の訴えはなく、産休まで通常通り就業するか、合併症があれば早めに休職に入るかで、人事が対応に悩むことは比較的少なかったようです。ところが最近は、妊娠に伴い就業上の措置を要しながら働くケースが増えているという声も聞きました。

 この背景には、いくつかの要因が考えられます。まず女性の活躍が進み、妊娠後も仕事を続けたいと考える女性が増えたこと、仕事と妊娠の両立を実現しているロールモデルが増えたことがあります。そして、妊娠に伴うトラブルや不調を表現しやすくなった、相談しやすくなったなども挙げられるでしょう。ですから、相談が増えたことは決してマイナスの事態ではありません。ただし、会社としては、就業規則に疾病休業や産後の育児による時短勤務の記載はあるものの、妊娠を理由にした措置について記載がないことも多く見られるようです。また、妊娠そのものは病気ではないため、本人の訴えのみでは対応に苦慮する職場が多いようでした。

妊娠に伴う不調について

 まず、妊娠・出産は、経過が順調であれば“病気”には該当しませんが、“特別な健康状態”であると理解していただくようお願いします。状態が悪化して“治療”の必要があるとなれば、“病気”という扱いに変わっていきます。

 例えば「つわり」は、妊娠初期にみられる“特別な健康状態”の範疇ですが、極度な吐き気や嘔吐で食事が摂れず、脱水を起こすなどして点滴などの“治療”が必要となった場合は、「悪阻(おそ)」として“病気”と扱うのが一般的です。しかし、その境界線は必ずしもはっきりと区別できるものではないため、判断に悩む人事担当者が多いのです。

 妊娠中に生じやすいトラブルや不調は多様ですが、代表的なものには……妊娠悪阻、貧血、出血、切迫流産、切迫早産、妊娠浮腫、妊娠高血圧、妊娠糖尿病、多胎妊娠、腰痛、静脈瘤、膀胱炎などが挙げられます。この他、はっきりしない倦怠感や頭痛、吐き気など、なんとなく体調が悪いと感じることもあります。

 全く不調や違和感を感じず元気に過ごせる人や、多少自覚症状があってもこれまで通り過ごせる人もいます。一方で、どんなに頑張ってコントールしようにも多様な症状に抗えず、パフォーマンスが落ちる人、仕事に支障を来す人、ひどい時には日常生活に支障を来す人もいます(食事・睡眠・入浴・移動・着替えさえもできなくなってしまうこともあります)。妊娠の経緯は、このように個人差が大きいことに加え、同一人物でも妊娠の経験数により異なったり、日や時間帯によっても体調は揺らぎ、安定しないことが特徴です。それ故、周囲からは症状が分かりづらく、会社側の配慮を難しくしている要因のひとつでもあります。

 参考までに、症状の例を挙げてみましょう。

(例)

・匂いに敏感になり、ちょっとした油や食品の匂いで吐き気を催し、移動や食事がままならない。

・流しを見るだけで吐いてしまう。何を食べても飲んでも吐いてしまう。トイレから出られない。

・体重が30㎏台まで落ち、死ぬかと思った。

・妊娠初期でおなかが大きいわけでもないのに、外を歩くとふらつきや動悸がする。

・歩行や座位は平気だが、立って待つ、並ぶなどの直立状態になると気分が悪くなる。

・出産までずっと体調が優れず、出社後と退社前に、必ず社内で15分ほど横にならせてもらった。

・小まめに飴などを食べ続けないと、気持ち悪くて仕事が手につかない。

・マタニティーライフを満喫などとはほど遠い状態だった。