石井 りな
フェミナス産業医・労働衛生コンサルタント事務所、(株)プロヘルス代表

「仕事が忙しいし、症状もないから、通院を辞めてしまった」
「忙しくて、病院に行っている時間がない」

 健康診断で「要医療」「要精密検査」と判定された社員との面談でよく耳にする発言です。

 せっかく健康診断で異常が見つかっても、未受診のまま放置したり、たとえ治療を開始しても、糖尿病をはじめとした生活習慣病の治療を辞めてしまう大半の理由は「仕事」といわれています。

 しかし、治療を自己中断した生活習慣病は自覚症状に乏しいため、必ずとはいえませんが、知らず知らずのうちに悪化、やがて心筋梗塞・脳梗塞・ASO・腎不全・網膜症・神経症など多彩な合併症を発症し、仕事を長期に休まざるを得ない、あるいは続けられなくなるといった事態をまねきます。「仕事」を優先に治療を中断あるいは治療をしなかった病気が、今度は結果的に本人から「仕事」を奪う形になってしまうのです。

 仕事を理由に治療を辞める人、治療を理由に仕事を辞める人、この両者を減らしていくことつまり、治療と仕事の両立支援が私個人、そしてフェミナス産業医事務所の目標でもあります。その両立支援の対策として、何度か連載でも取り上げている「職場」と「医療機関」の連携が重要です。今回は、冒頭のようなケースを減らすための連携起点となる「健診後のフォロー(健診事後措置)」について産業医としての取り組みを紹介したいと思います。

 まず、皆さんの職場では健康診断実施後、「どのように」そして「どこまで」有所見者をフォローしていますか?

 「健診事後措置」として健診機関から返却された個人結果を産業医に確認してもらっているかと思います。そこで、健診機関とは別の医師である産業医に結果を見せる目的をご存じでしょうか?

健診結果を産業医が確認する理由とは

 健康管理担当者が頻繁に変わる職場や、人事職でも健康管理は初めてという場合「とにかく結果を産業医に見せればいい」と考えていることも少なくありません。「事業者は産業医から意見を聴取する」という法律の点からは正しいのですが、産業医が健診結果を確認する目的を理解していない場合、せっかくの「健診事後措置」が機能しなくなるので、注意が必要です。

 産業医が健診結果を確認する目的は大きく次の2つです。
①就労判定(働けるかどうか? 通常勤務可能・就労制限・就労禁止などを判定)
②受診勧奨や健康指導の必要性

 臨床がベースで産業医としてのトレーニングを積んでいない場合、治療者視点が強いため②の受診勧奨や健康指導だけ判定して優先順位をつけるものの、①の就労判定を省いてしまっていることが見受けられます。実は、受診勧奨や健康指導については健診機関で既に判定され個人結果に明記されていることがほとんどですから、産業医がわざわざ健診結果を確認するいちばんの目的は①の就労判定にあります。