妊娠時の具体的な措置内容決定までのプロセスをケースをもとに解説します。基本プロセスは下記を参考にすると整理しやすいです。

①本人の意思と業務内容の確認
②医師からの指導事項を確認。母性健康管理指導事項連絡カード
 (以下、母健連絡カード)
③受け入れる職場側の意向及び労働環境の確認
④産業医の意見を仰ぐ
⑤就業上の措置内容を決定し実施する

 分かりやすいケースを2つご紹介しましょう(内容は一部改変しています)。

<ケース1>
エンジニア職、妊娠24週。

 都内でのインフルエンザや風疹の流行に伴い、妊娠中の社員が、大規模な会議への出席を拒否したり、客先への外出に抵抗を示すケースがあり、上長や人事が対応に悩んでいました。

①本人の意思と業務内容の確認

 風疹に罹患した場合に胎児へ影響が出やすいといわれる妊娠20週未満は過ぎていますが、リスクがゼロとはいえない。感染しても会社が責任をとってくれるわけでもない。風疹予防の社内周知が不十分で不安。咳をしているのにマスクをしていない人がいる。妊娠している社員がいるのだから、もっと徹底してほしい。本人の希望は、ラッシュを避けた時差通勤、会議と外回りの免除でした。仕事を休みたいわけではない。基本はデスクワーク。

②医師からの指導事項を確認(診断書や母健連絡カード)

 妊娠経過そのものは順調なため、産婦人科の主治医は就労上の制限はなく、診断書も母健連絡カードも書けないとのことでした。

③受け入れる職場側の意向及び労働環境の確認

 可能な範囲で配慮をしたいが、医師からの指示なしに本人の希望だけで会議や外出を全くしないのは正直なところ困ってしまう。診断書などで確認できると、周囲の理解を促しやすく配慮しやすい。

④産業医の意見を仰ぐ

 産業医面談にて、改めて本人の希望と状況を詳細に確認しました。すると、過去に「不安障害」の既往があり、妊娠中のため投薬はないものの現在も心療内科へ通院し、妊娠に関連した不安について相談していることが分かりました。このため感染リスクへの不安が強く、行動にも影響がでていると考えられました。会社の理解を得るため、通院状況を会社と共有することに本人が同意。産業医は心療内科の主治医へ就労に関する意見を仰ぐよう、本人へ指導しました。同時に会社に対して、風疹などの感染予防の周知をさらに強化するよう依頼しました。

⑤就業上の措置内容を決定し実施する

 後日、心療内科主治医から 「感染に対する不安症状が強いため、通勤、会議や外出に対する配慮が望ましい」と診断書が提出されました。この診断書をもとに職場内で配慮が可能となり、時差通勤、会議出席の免除(ただし重要な会議はマスクを着用して出席)、外出の免除を実施でき、本人は産休に入るまで無事に働き続けることができました。