社員本人にとっては適切なタイミングでの受診という健康面のメリットだけでなく、時間的、金銭的なメリットにもつながりました。周辺医療機関との医療連携をフルに活用した診療態勢で、クリニックにはない検査設備であっても、1回の受診の中で、ほとんどすべての必要な検査を手配できます。一部の病院とは優先外来予約枠があるため、検査の手配だけでなく、専門外来の受診が必要な場合に速やかな紹介が可能でした。

 クリニックを受診して、また大きい病院へ行って診察でいろいろ事情を話して、やっと検査という流れは必要なく、クリニック受診後、大きな病院では検査だけを行い、結果はクリニックでと、待ち時間の短縮や選定医療費の節約にもつながります。検査結果報告をした場合、2次検査にかかった医療費自己負担分を会社が負担するところも少なくありません。予算的に可能であれば、社員の経済的メリットにもなり、2次検査の受診率向上や健康状態の把握につながります。

 フェミナス産業医事務所の関連施設である「九段下駅前ココクリニック」は、「健診異常はココで解決!」を合い言葉にしています。多忙を理由に、健診異常を放置していた人や治療を中断してしまった人が、きちんと治療できるよう「治療と仕事の両立」が可能な環境を整えています。通院しやすい立地(東京メトロ駅出口正面)、遠隔診療(オンライン通院)をはじめとした従来の型にとどまらない通院選択肢を用意しています。患者さんが働く環境を聞きながら、働きながら実現できる生活習慣の改善や治療法、通院方法を決めていきます。

 生活習慣病のような長期的な管理が必要な病気では、治療者(主治医)の頭の中は、病態や管理目標値に占められてしまいがち。しかし、いくら理想的な治療目標を掲げても、患者さんが通院を辞めてしまっては、治療者にとって治療の敗北といえます。

 健康日本21推進フォーラムのデータでは、30歳代で健康診断において糖尿病の「要治療」判定を受けた人たちの中で、未受診が4割超、受診しても治療しない“放置”が6割超となっていました。

 まだまだ始まったばかりの取り組みではありますが、1人でも多くの人が自身の健康リスクに対して早めに対処する機会を開拓し、中断することなく治療継続が可能な環境を提供していきたいと考えています。

石井 りな(いしい・りな) 精神科専門医、産業医 / フェミナス産業医事務所、株式会社プロヘルス 代表
石井 りな

 千葉大学医学部卒。総合病院にて研修後、精神科病院や精神科クリニックに勤務。並行してうつ病リワーク施設や企業向けメンタルヘルス支援機関を経験。精神分析・力動的精神療法、認知行動療法などの精神療法も学ぶ。診療や企業での経験を通じて、従業員の健康対策は企業の生産性を高めるうえで必要不可欠だと確信。「健やかに活き活きと仕事に挑戦し続けられる社会」を目指し、精神科産業医の立場から企業を支援したいと思い、女性医師を中心にフェミナス産業医事務所を設立。現在、多くの企業で産業医として活動する傍ら、大学で費用対効果の高いメンタルヘルス対策についての研究も行っている。
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※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。