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 メンタルや身体疾患など個々の病気の種類は問わず、慢性疾患や症状固定した後遺症をもつ労働者が、健康状態を理由に月の半分も出社できずに人事や上司が対応に苦慮するケースには、多くの会社で遭遇します。

 「Aさんはいつ回復して、通常通りに働けるようになるでしょうか?」

 「正直、このままで見過ごすわけにいきません。きちんと働けるようになる方法は何かあるのでしょうか? それとも再度、療養に専念してもらった方が良いのでしょうか?」

 こうした相談を多く受けます。

会社側の体力と受け入れ状況がポイント

 産業医としては、まず本人の健康状態や就労能力を評価する必要がありますが、同時に、会社側の「体力」や「受け入れ状況」が気になります。

・本人の状態や訴えから配慮すると可能な業務もあるが、それは会社で許容できる範疇にあるのか?

・会社としての機能と社業推進を損なわずに、どこまで本人に配慮できるのか?

・本人の周囲に過負荷とならずに、配慮できる程度は?

・本人への配慮が継続できる期間の目安は?

 などです。

 規模が大きな会社ほど、「体力」すなわち労働者数の余裕があり部署の選択肢も多いため、柔軟な対応ができる可能性が高くなりますが、一方で規模が小さい会社では難しいことが多々あります。

 たとえ規模が大きな会社であっても、もともとの就労形態が職種を限定した雇用契約だったり、できる業務に限りがある際は、配慮にも限界があります。従って、こういった処遇に苦慮している場合は、会社側は何ができて、何はできないのか? あらかじめ対応できる事柄や、容認できる程度について方針を決めておく必要があります。

 「主治医の診断書に書いてあるから」「産業医が意見したから」といって、その通りにしなくてはいけないわけではありません。会社には安全配慮義務があると同時に、労働契約に基づき就業について命令する権限があるからです。

 繰り返しになりますが、会社としてあるいは部署として、対応できる事柄や容認できる就業上の制限範囲を決めていく必要があります。産業医はあくまで、「就業制限(させてはいけないこと or できないこと)」や「就業配慮(こうであったら望ましい、働きやすい)」という就業上の意見を提供する役目なので、最終的な線引きやジャッジは会社側が積極的にそして主体的に行わなければなりません。