石井 りな
精神科専門医、産業医/フェミナス産業医・労働衛生コンサルタント事務所、(株)プロヘルス代表

 身体疾患は検査データから分かりますが、メンタルに関わる面談業務では、本人との対話や、時にはチェックシートなどを用いて、回復見込みや職場復帰までに要する期間、職場復帰の見込みなどを評価していきます。評価する際には「本人の重症度」や「不調を来した要因」が大きなファクターになることはもちろんですが、それらと同じくらい、面接の際に必ず確認している重要なファクターがあります。それは「家族や周囲との関係性」です。

 日頃から家族や周囲と良好な関係性を築いている人は、いざという時、同僚から快く手を差しのべてもらえたり、家庭内では休息がとれるよう家族の支援を受けられる可能性が高まります。身近に家族やパートナーがいると、日常生活の支援を得やすく十分な休息がとれるだけでなく、生活リズムが崩れにくい、孤立せず対人交流が生まれるなどのメリットがあります。逆に、不規則な生活リズムや対人交流の乏しさは、メンタル不調のリスクファクターです。

 実際の面談では
「自分の弱みを見せられる相手がいますか?」
「病気のことを安心して相談できる人はいますか?」
「生活を含めていざという時サポートしてくれる存在が身近にいますか?」
「家族はどの程度、今の状況を知っていて、どのような反応を示していますか?」
のように確認をします。

 例えば、
・家族に不調や病気のことを話せていない。毎日出社しているふりをしている。
・家庭内に会話が少なく、お互い仕事のことは一切干渉しない。
・家族に話しても「いいかげんにして、情けない」などと責められてしまう。
・初めて親元を離れ、上京してきたばかりで周りに友人がいない。会社の人間関係のみ。
・職場の同僚(または上司)とそりが合わず、仕事を助けてほしいと言えない。助けてもらえない。
など、家族へ安心して本当のことが言えない環境、身近に相談相手がいない環境、仕事のサポートが得にくい環境だと、適切なサポートが得にくく病気の回復に支障を来します。

 「家族や周囲との良好な関係」は回復への最大の武器ともいえます。同じような原因を理由に発症し、同じような重症度であっても、「周囲からのサポート」を持ち合わせているか否かによって、回復への道筋は大きく差が出てきます。職場や個人ファクターだけでなく、プライベートの部分「家族との関係性、家族の支援」も、職場におけるメンタルヘルス不調に大きく影響します。

 だからといって、「自分が回復しないのは家族や周囲が助けてくれないからだ」と人のせいにするのは本末転倒。自分はつらいのになかなか理解されないと感じている場合には、「自分と家族」「自分と周囲」との関係性を見つめ直してみましょう。