セルフ・アウェアネス (ハーバード・ビジネス・レビュー [EIシリーズ])
セルフ・アウェアネス (ハーバード・ビジネス・レビュー [EIシリーズ])
ハーバード・ビジネス・レビュー編集部 編 / ダイアモンド社 / 1,540円(税込) / 152ページ

 前GE会長のジャック・ウェルチ氏は、自身が20世紀最高の経営者と評された理由を「セルフ・アウェアネス」の存在だと答えた。日本語では「自己認識」と訳される。この書籍の執筆者の一人であるダニエル・ゴールマン氏の定義では、“自分の感情、長所、短所、欲求、衝動を深く理解すること”である。自己認識に優れた人は、自分の感情が、自分自身、他者、自分の仕事の結果にどう影響するかを認識しているのだ。

 本書は、昨今注目度の高いEmotional Intelligence(EI、感情知性)を中心に『ハーバード・ビジネス・レビュー』から厳選された論文をまとめたものであり、11の論文から構成されている。

 私自身もEIのトレーナーを務めている。日々多くの現場リーダーに向けて、EIを通してリーダーシップやマネジメントを伝えている。

 従来、自己よりも組織を意識し、数字、ロジック、ビジネスモデルで組織が勝つことを重視してきたリーダーたちにとって、ここ最近の組織構造とリーダーシップスタイルの変化は、従来の価値観や視点を変えるパラダイム転換を伴う。

 最も分かりやすい例は、“We”という主語で語ることができるのに、“I”という主語で語ることができないリーダーが多いことだ。会社や組織のあり方やミッションは語れても、自分のこととなると語れないリーダーが非常に多いのである。

 実は、本当に自分のことを語れないわけではなく、自分を主語として語る場合に必要な、“自らを知り、自らを振り返り、自らのことを語る”ことを今まで職場でしてこなかったのだ。もしくは、“I”を主語に語ることが許されてこなかったのである。

 とにかく実行する「Doing」を重視する姿勢が第一だったリーダーにとって、自らを内省し、フィードバックを受け、自分自身が何者になれるかを発見する「Being」へと意識を向けるのは、それなりの意識転換と訓練が必要だ。

 序章で立教大学の中原 淳教授が著されている通り、残念ながら「一つの組織に守られ、しがみつく時代はもう長くはない」。これからは、自らがどのように生き、「仕事を通して何を成し遂げたいのか」を見いだし、自らのストーリーを常に更新していく必要性があると解説している。そのためには、常にセルフ・アウェアネスを高めていくことが不可欠になる。

 本書には、世界中の識者から多様な切り口でセルフ・アウェアネスが紹介され、深めていくための様々な手法やトレーニングについても紹介されている。人材育成に携わる人事担当者の皆さんには、ぜひ手に取っていただき、まずは自分自身のセルフ・アウェアネスに時間をとることをお勧めする、そんな一冊である。 

参考書籍

insight(インサイト)――いまの自分を正しく知り、仕事と人生を劇的に変える自己認識の力
ターシャ・ユーリック 著 / 中竹竜二 監 / 樋口武志 訳 / 英治出版 / 2,200円(税込) / 528ページ

池照 佳代(いけてる・かよ) 株式会社アイズプラス 代表取締役
池照 佳代

 約14年間、マスターフーズリミテッド、フォードジャパン、アディダスジャパン、ファイザー等で一貫して人事を担当。2006年法政大学経営大学院在学中に同社を設立。人材・組織開発コンサルタントとして、企業向けに人材採用・教育、人事制度設計支援・コンサルティング、ダイバーシティ・女性活躍推進施策企画、エグゼクティブコーチング、EQ(感情知性)開発支援を提供している。加えて、NPO法人キーパーソン21(キャリア教育の全国普及)理事、NPO法人IC(インディペンデントコントラクター)協会理事として活動。キャリア、働き方、起業支援や講演も多数。CDA(キャリアデベロプメントアドバイザー)、EQGA公認トレーナー。SEI EQプラクティショナー・アセッサー(国際認定資格)。The Bob Pike Groupプロフェッショナルトレーナー。
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※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。