研修デザインハンドブック
研修デザインハンドブック
中村文子、ボブ・パイク 著 / 日本能率協会マネジメントセンター / 3,024円(税込) / 344ページ

 社内研修の位置づけが変わりつつある。以前は、企業が求めるアウトプットについて学び、ほぼ一つの正解通りに行動できるようになるための習得の場であった。この場合、研修時間は比較的長時間で座学スタイルとなる。

 ところが現在、多くの研修で期待されているのは、社員がそれぞれの現場で思考し、自分たちの価値基準や顧客ニーズ・ウォンツに対応した行動アウトプットを出すことである。研修時間もできるだけ短くし、個人やチームで思考して自分たちなりの対応や答えを導きだすことを期待されている。“以前”とはかなり真逆のことを求められているのだ。

 少なくとも、私自身の周囲ではこの変化が確実に起きている。

 「研修」自体の期待値がこれだけ変化しているが、研修をデザインする我々人事・人材育成担当者に向けた研修の機会は限りなく少ない。私たちは、変化を感じているにもかかわらず、変化に対応し、変化を先取りするような学びの場はあまり与えられていない。この書籍はそんな我々に「研修」を中心に学びの前後を含めた全体デザインについて「インストラクションデザイン」をベースに紹介しているものである。

 ケーススタディとして具体例、そして書き込みができるワークシートが豊富に用意され、文字通り研修のゼロからのデザイン、または既存研修の流れや方策をあらためて見直すことが可能となる。インストラクションデザインの研修デザインへの活用は、その目的から吟味して研修の前後を含めた一連のプロセスをデザインしていることにある。前述した「以前の研修」がデリバリー(講師の講義やファシリテーション)の重視だったとすれば、「今時の研修」は研修開始前の上司の巻き込み、参加者の事前準備、研修期間中の相互コーチング、そして研修後のフォローアップまでの一連の流れを含めたプロセスに焦点を当てたデザインをするということだ。

 本書では、この一連の中で効果的なポイントが多様な視点から紹介されているのである。私自身も研修の全体デザインや講師を務めることが多いため、研修の効果は研修そのものよりも参加者の上司や研修事務局を巻き込むこと、そしてフォローアップのメッセージ作りや頻度の調整で決まることが多いと実感している。

 2017年にこのコーナーで紹介した書籍『講師・インストラクターハンドブック』は、講師としてデリバリーのスキルや影響力を発揮するためのスキルが紹介されていた。

 本書で紹介されている研修全体のデザインを合わせて読むことで、講師・インストラクターとしての工夫できる点まで網羅的に習得できる。研修担当者のみならず、人に行動変容を促したいと考える多くの方に、ぜひ辞書として活用していただきたい一冊である。

参考書籍

講師・インストラクターハンドブック
中村 文子、ボブ・パイク (著) / 日本能率協会マネジメントセンター / 3,024円(税込) / 336ページ

池照 佳代(いけてる・かよ) 株式会社アイズプラス 代表取締役
池照 佳代

 約14年間、マスターフーズリミテッド、フォードジャパン、アディダスジャパン、ファイザー、ほかにて一貫して人事を担当後、2006年法政大学経営大学院修了と同時にアイズプラスを設立。人材・組織開発コンサルタントとして、主に企業向けに採用から教育、評価などの人事制度設計支援・コンサルティング、タレントマネジメントやダイバーシティ、女性活躍推進施策の企画・提供、エグゼクティブコーチング、EQ(感情知性)開発支援を提供している。このほか、NPO法人キーパーソン21(キャリア教育の全国普及) 理事、NPO法人IC(インディペンデントコントラクター)協会 理事として活動し、キャリア、働き方、起業についての支援や講演活動に従事。CDA(キャリアデベロプメントアドバイザー)、EQGA公認トレーナー。SEI EQアセッサー(国際認定資格)。The Bob Pike Groupプロフェッショナルトレーナー。
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※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。