ビジネスに効く 表情の作り方(顔は口ほどにモノを言う!)
ビジネスに効く 表情の作り方(顔は口ほどにモノを言う!)
清水 建二 著 / イースト・プレス / 1,512円(税込) / 240ページ

 「この度1位を取りまして、とても喜ばしいことです」と壇上である営業部の功績を称えた某企業の社長の話は、あまりに「伝わらなかった」のである。表情がほぼなく、淡々とした話だったからで、この話を聞くことを知っていた私でさえ、拍手は3秒たってからになってしまった。聞いている私たちには言葉としての情報は伝わっているが、伝わってこなかったのは社長の表情やしぐさといったノンバーバルな情報なのだ。

 コミュニケーションの向上をテーマとしたプログラムを提供する私自身のところにも、毎日のようにくる相談の一つは「意図が相手や周囲に伝わらない」である。“話はしているが伝わっていない”、“意図した内容が誤解されて伝わっている”という話を多く聞く。人を動かして成果につなげることが目的であるビジネスのなかでこれは大きな課題となる。

 ビジネスの場面でのノンバーバル、とりわけ「表情」の影響力は大きく、本書によれば、我々は言葉からは7%、声の調子や口調からは38%、ボディランゲージからは55%の影響を受ける。つまり、前述の私の例でいえば、社長の無表情さと淡々とした口調という視覚情報によって、1位を取ったという言葉の情報は打ち消されてしまっていたのだ。本書はこのように「伝える」について影響力の大きい「表情」を、科学的知見と経験測から解説している一冊である。

 本書からの意外な発見だったが、幸福、軽蔑、嫌悪、怒り、悲しみ、驚き、恐怖といった7つの表情やしぐさは万国共通とのことだ。私たちは普段、あまり意識せずとも自然に万国共通である表情を使っているが、この表し方には差があるらしい。特に私たち日本人は感情が表に出ないように表情を抑制することは得意だが、明確に表現することは苦手である。

 確かに私たち日本人は、子供の頃から特に公の場で感情を表すことはあまり良しとされていない傾向が強い。社会人になる頃にはすっかり感情をカモフラージュするどころか、それがいきすぎて自分の感情や気持ちと表情やしぐさが一致しない人も多くなっているようである。せっかくの賞賛スピーチの意図が伝わらず、3秒遅れの拍手では会場もモヤモヤなままである。

 著者は主にビジネスや研究の分野で、科学的知見をもって人の顔の動きを読み取る表情分析の専門家である。

 本書にはこの科学的な理論と様々なビジネスシーンの実体験をベースに、効果的に想いや感情を伝えるための表情やノンバーバルについて丁寧に解説しているものである。ページを進めていくと、世の中にはこんなに様々な表情があったかと驚かされる。それぞれの顔のパーツをどう活用すべきかも解説があり、思わず自分の顔でも試したくなる。喜怒哀楽を含め、様々な感情を伴うシーンに向き合うのが私たち人事・人材育成担当者の仕事である。

 意図が伝わる表情を学ぶことで、自分にも相手にも分かりやすいコミュニケーションに役立てることが可能になる良書である。

参考書籍

『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』
清水 建二 著 / フォレスト出版 / 1,620円(税込) / 242ページ

池照 佳代(いけてる・かよ) 株式会社アイズプラス 代表取締役
池照 佳代

 約14年間、マスターフーズリミテッド、フォードジャパン、アディダスジャパン、ファイザー等で一貫して人事を担当。2006年法政大学経営大学院在学中に同社を設立。人材・組織開発コンサルタントとして、企業向けに人材採用・教育、人事制度設計支援・コンサルティング、ダイバーシティ・女性活躍推進施策企画、エグゼクティブコーチング、EQ(感情知性)開発支援を提供している。加えて、NPO法人キーパーソン21(キャリア教育の全国普及)理事、NPO法人IC(インディペンデントコントラクター)協会理事として活動。キャリア、働き方、起業支援や講演も多数。CDA(キャリアデベロプメントアドバイザー)、EQGA公認トレーナー。SEI EQプラクティショナー・アセッサー(国際認定資格)。The Bob Pike Groupプロフェッショナルトレーナー。
●アイズプラス https://is-plus.jp/
●ブログ http://isplus1.hatenablog.com/
●フェイスブック @iketeruisplus

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。