最強チームをつくる方法
最強チームをつくる方法
ダニエル・コイル 著 / かんき出版 / 1,728円(税込) / 416ページ

 私の仕事の一つは、企業を対象に、ダイバーシティや企業理念浸透のためのプロジェクトをリードし、ファシリテーションすることである。もちろん、私がプロジェクトチームを率いていくのではなく、それぞれの企業の社員がプロジェクトメンバーとして進めていく。同じようなテーマでプロジェクトを進めている企業は多い。

 A社でもB社でも私自身がプロジェクトの流れをつくり、両社ともに社内を横断して集められた優秀な人材でチームを形成する。違いはそれぞれのチームが持つ雰囲気や文化である。似たようなテーマを追求しているにもかかわらず、「できそうな気がする」と思わせる何かがあるチームと、「無理そうな気がする」と思ってしまうチーム、この雰囲気や文化の違いがプロジェクトの成否に大きく関わる。

 本書は、「強いチーム」をつくる方法を、「日常の、ちょっとしたさりげない行動」によって誰でも構築できるヒントと事例を紹介している。

 強いチームをつくる原点とは、カリスマ性のあるリーダーの存在でも、優秀とされる人材を必死に集めることでも、ビジネススクールで学ぶ目標達成のためのフレームワークでも、そしてトップと結託した外部コンサルタントの介入でもない。我々が日々の業務の中で少し意識し、行動に移すことで実現できるというのだ。

 著者はこれを、世界でもっとも成功している8つの多様な「強いチーム」を訪ね歩き、「強いチーム」に共通する3つのスキルにまとめた。それは、帰属意識とチームのアイデンティティを示す「安心な環境をつくる」スキル、相互の信頼関係を構築する「弱さを見せる」スキル、価値観や目標を共有する「共通の目標を持つ」スキルだ。

 これら3つが「どれか」でなく「どれも」発揮されている状態をつくり、人と人がつながる関係の質を向上させていく。本書では、これらのスキルを身につけるための具体的な方法も紹介されている。

 書籍の冒頭で紹介されている「ビジネススクールの学生 対 幼稚園児」の実験には、考えさせられることが多い。

 大人になるにつれ我々が学ぶ戦略や戦術、相手や周囲を気遣い空気を読むことや自分自身を抑えて遠慮することが、時にチームの目的達成を阻害するという。一方で、目の前の課題に対し自分が得意な分野を武器に集中し、行動し、失敗から学び修正する、そんな幼稚園児たちの行動が私たちに伝えてくれるものは多くある。この書籍にはこの幼稚園児のチームが使った方法が詳しく解説されている。

 もし、強いチームをつくりたい、または今のチームをより強くしていきたいと思うリーダーには、ぜひ一読をお薦めする。日常の「普通」と思われる言動にどれだけのパワーがあるか、もう少し「普通」を丁寧に扱うだけで、今のチームが「強いチーム」になる姿が見えるはずである。

参考書籍

チームが機能するとはどういうことか――「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ
エイミー・C・エドモンドソン 著 / 英治出版 / 2,376円(税込) / 392ページ

池照 佳代(いけてる・かよ) 株式会社アイズプラス 代表取締役
池照 佳代

 約14年間、マスターフーズリミテッド、フォードジャパン、アディダスジャパン、ファイザー等で一貫して人事を担当。2006年法政大学経営大学院在学中に同社を設立。人材・組織開発コンサルタントとして、企業向けに人材採用・教育、人事制度設計支援・コンサルティング、ダイバーシティ・女性活躍推進施策企画、エグゼクティブコーチング、EQ(感情知性)開発支援を提供している。加えて、NPO法人キーパーソン21(キャリア教育の全国普及)理事、NPO法人IC(インディペンデントコントラクター)協会理事として活動。キャリア、働き方、起業支援や講演も多数。CDA(キャリアデベロプメントアドバイザー)、EQGA公認トレーナー。SEI EQプラクティショナー・アセッサー(国際認定資格)。The Bob Pike Groupプロフェッショナルトレーナー。
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※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。