池照 佳代
アイズプラス 代表取締役

ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学
ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学
入山 章栄 著 / 日経BP社 / 1,944円(税込)/ 368ページ

 「経営学」を表題にする書籍は、簡単なこともあえて難しく書かれていていつも分からないままになったりする、これは私が時々この手の書籍にもつ感想である。一方、逆にストーリー仕立ての経営書ではあまりに知見のまとまりがないまま、「よくできた映画のようなお話」で終わってしまいがち、これもよく聞かれる話の一つである。

 経営学という学問には正解がないそうである。よく聞く話なので理解はしているつもりだが、それなのに我々はこの手の書籍を手にする時に何かしらの「正解」を探していることが原因なのでは、と今回この書籍を読んで感じた。

 今回紹介するこの書籍は、その意味では少し「難しい経営学の本」の部類に入るが、様々な経営に関する「世界最先端の経営学の知」を紹介し、そこに解答ではなく「学者の総意とまではいわないけれど、日本のビジネスパーソンにとって示唆がありそうな興味深い経営学の研究成果」やいくつかの事例、データ、そして著者自身の意見や示唆が述べられている点が斬新である。

 例えば、第13章「日本企業にダイバーシティ経営は本当に必要か」では、現在注目度の高いダイバーシティ施策について2種類のダイバーシティが紹介されている。分かりやすく代表的な「女性・外国人活用」をひとまずダイバーシティ導入の入り口にする企業が多くあるが、目的が成果を出すためであれば、もう一方の切り口であるダイバーシティに着目すべきことをこの章では解説している。ただただ「ダイバーシティ」という言葉を追いがちになる風潮があるが、ぜひこの章に目を通して自社のビジネスや人と組織について再考されることをお勧めしたい。

 他にも、「グローバル」「働く女性」「起業活性」など、ここ数年でメディアやビジネス雑誌に頻出する言葉を軸とした「興味深い示唆」が続く。第16章「成功するリーダーに共通する「話法」とは」は、これまで経営学書籍であまり目にしたことのない「言葉の使い方」に言及しており、大変興味深く楽しむことができた。

 人事・人材育成担当者が「経営学」の書籍内容をそのまま業務に使うことはさほど多くないかもしれない。だが、本書から得られる「流行りの経営の知」に対する統計データと多角的な視点の持ち方は、自社のコンセプトを打ち出していく過程で非常に参考になると考えられる。書籍を通した、経営学者である著者との対話を楽しみながら読み進められる一冊としてお薦めするものである。

参考書籍

『世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア』
入山 章栄 著 /英治出版 / 2,052円(税込) / 352ページ

池照 佳代(いけてる・かよ) 株式会社アイズプラス 代表取締役
池照 佳代

 約14年間、マスターフーズリミテッド、フォードジャパン、アディダスジャパン、ファイザー等で一貫して人事を担当。2006年法政大学経営大学院在学中に同社を設立。人材・組織開発コンサルタントとして、企業向けに人材採用・教育、人事制度設計支援・コンサルティング、ダイバーシティ・女性活躍推進施策企画、エグゼクティブコーチング、EQ(感情知性)開発支援を提供している。加えて、NPO法人キーパーソン21(キャリア教育の全国普及)理事、NPO法人IC(インディペンデントコントラクター)協会理事として活動。キャリア、働き方、起業支援や講演も多数。CDA(キャリアデベロプメントアドバイザー)、EQGA公認トレーナー。SEI EQプラクティショナー・アセッサー(国際認定資格)。The Bob Pike Groupプロフェッショナルトレーナー。
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●フェイスブック @iketeruisplus

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。