セキュアベース・リーダーシップ ――〈思いやり〉と〈挑戦〉で限界を超えさせる
セキュアベース・リーダーシップ ――〈思いやり〉と〈挑戦〉で限界を超えさせる
ジョージ・コーリーザー、スーザン・ゴールズワージー、ダンカン・クーム 著 / 東方 雅美 訳 / ブレジデント社 / 2,700円(税込) / 416ページ

 “リーダーシップには850もの定義がある”、どこで聞いたか定かではないが、どこかで聞いてそう記憶している。確かに、Amazonで「リーダーシップ」を検索すると2万冊以上もの候補が出る。どうやら850という数字は嘘でもないようだ。もう一つ、よく聞く話の一つに“リーダーシップは、個人的なものではなく、誰もが学べるもの”もある。本当に誰もが学べるなら、今頃世界はリーダーシップをとる人であふれ、こんなに多くの書籍があふれかえるはずもない。

 私個人の見解だが、リーダーシップは個人がそれぞれ学びや経験から紡ぎだすものがベースとなり、そこに多くの先人が見いだした習得可能な行動が掛け合わさりブレンドされて「その人のリーダーシップ」になると確信している。リーダーシップを発揮する行動は誰もが学ぶことができる、だが、それらの行動をより際立たせるベースはその個人が経験から感じ取ったきわめて「個人的なもの」であるはずだ。

 本書で紹介する「セキュアベース」とは、守られているという感覚と安心感があり、思いやりを示すと同時に物事にチャレンジできる意欲とエネルギーの源となる人物、場所、あるいは目的や目標のことを指す。つまり、きわめて「個人的なもの」なのである。

 自分自身が子供の頃に守られている感覚や思いやりを感じながら何かに挑戦しようと感じさせてくれたのは家族や友人だっただろうか、もしくは子供の頃から度々訪れた海や山だっただろうか。人によっては信じて疑わない「信念」のようなものなのかもしれない。大人になってからはその存在は変化しただろうか?

 本書には、読者自身が「セキュアベース」を見いだし、これをベースとしてリーダーシップが開発できるように、随所に「問いかけ」が用意されている。私自身、この「問いかけ」によって自分自身が安心感を覚え、日々小さな挑戦に挑める「拠り所」を見いだすことができた。これが、私自身を次の一歩に向かわせる源泉になっていたと知る機会を得たのだ。 

 誰しもが安心感を覚え、新たな一歩を踏み出す勇気がもてるセキュアベースをもっている。このセキュアベースをもとに、ものごとに挑み、挑戦への意欲とエネルギーをもたせるのが「セキュアベース・リーダーシップ」である。

 本書ではこのセキュアベース・リーダーシップを発揮するための“9つの特性”が紹介されており、一つひとつの特性を磨き自他に影響力を与えるためのステップや問いが示されている。読めば読むほど、そのようなリーダーになるには理解し、意識し、行動の繰り返しが必要であり、すぐに到達できそうにない。だが、読めば読むほど仕事の場を超えて、自分の人生の中にある「あたたかくて勇気の出る自分の拠り所」に気づき、一歩前に進めそうなるリーダーシップに感謝の気持ちになれる。

 誰かが言った850もの定義の一つでなく、851番目の「自分らしいリーダーシップ」を見いだしそれを組織の強さにするのなら、この「セキュアベース・リーダーシップ」を取り入れることをお勧めしたい。人事・人材育成担当として、“これから”のリーダーシップを考える際に取り入れていきたい視点である。 

参考書籍

スタンフォード式 最高のリーダーシップ
スティーヴン・マーフィ重松 著 / サンマーク出版 / 1,728円(税込) / 351ページ

池照 佳代(いけてる・かよ) 株式会社アイズプラス 代表取締役
池照 佳代

 約14年間、マスターフーズリミテッド、フォードジャパン、アディダスジャパン、ファイザー等で一貫して人事を担当。2006年法政大学経営大学院在学中に同社を設立。人材・組織開発コンサルタントとして、企業向けに人材採用・教育、人事制度設計支援・コンサルティング、ダイバーシティ・女性活躍推進施策企画、エグゼクティブコーチング、EQ(感情知性)開発支援を提供している。加えて、NPO法人キーパーソン21(キャリア教育の全国普及)理事、NPO法人IC(インディペンデントコントラクター)協会理事として活動。キャリア、働き方、起業支援や講演も多数。CDA(キャリアデベロプメントアドバイザー)、EQGA公認トレーナー。SEI EQプラクティショナー・アセッサー(国際認定資格)。The Bob Pike Groupプロフェッショナルトレーナー。
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※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。