「禅的」対話で社員の意識を変えた トゥルー・イノベーション
「禅的」対話で社員の意識を変えた トゥルー・イノベーション
三木 康司 著 / CCCメディアハウス / 1,728円(税込) / 272ページ

 自分のなかにある“真に独創的なアイディア”は、自分の「内」にある、これを「『禅的』対話」を中心とした手法から導き出すコンセプトとプロセス、そして事例を丁寧に紹介したものが本書である。著者は自らの事業会社やベンチャー企業での経験、博士課程を目指したアカデミック領域での経験、そして自身が居住する鎌倉でのコミュニティー活動の経験から、自身の事業として「Zen School」を立ち上げ、多くの卒業生とともに何かしらの新たな製品やサービス、つまりはイノベーションを世に送り出している。

 私は、日系企業数社のリーダー育成プログラムを数年にわたり担当している。業種は様々だが、集められるリーダーたちには「各企業の未来を創る事業に関わる人材になる」という共通の期待値がある。つまり彼らは各領域でのイノベーションをけん引する人材になることを望まれている。

 だが、最近このテーマをファシリテーションするのに課題を感じることがある。彼らの多くが「自分自身」から発する言葉を紡ぎだせない、または「自分自身」の考えが出てこないことである。主語が会社、部門、または上司、であれば得意だが、こと「自分自身」の考えや自分がやってみたいこと、となると言葉が出てこないケースがあるのだ。

 形にできないのではない。多くの場合は、これまで「本当に自分がやってみたいこと」を自分のなかで練り、形にする機会がなかったのである。これは、これまでのビジネスモデルからの転換が期待されるなか、発想と視点を変えて一人ひとりが発信源となるような組織を作りだすには大きな課題となる。何しろ「あなた自身は何をしたい?」が創れない状態なのである。

 ここが腹落ちしない限り、本書でいう通りイノベーションらしいものが持続するのは難しい。 

 既存のプロセスやサービスに外でもよく聞くような用語を掛け合わせて作成したイノベーション“もどき”の多くが、いつのまにか社内で消えてしまっていたことを私たちは知っている。そして本当のイノベーションは、実は、「個人のこだわりやなかなか伝わらない自分のなかの消えない情熱」から生まれていることにも気づいている。本書は、各個人が真のイノベーション(トゥルー・イノベーション)を見いだし、「内発的動機=自分が本当に心からやりたいこと」を導くための自分と、そして周囲との対話の実例を示したものといえる。

 マインドフルネス、デザイン思考、ロジカルシンキング、そして禅と、昨今よく耳にする用語も多く紹介され、「Zen School手法」との相乗効果や位置づけについても解説がある。未来的な人材を同社内で育成していくか、旧来のイノベーション創出を今後どう変えていくべきなのか、そして自社は本当に何を求めているか、そんな「問い」が自らに立った時、ぜひ手に取ってほしい一冊である。

参考書籍

対話型組織開発――その理論的系譜と実践
ジャルヴァース・R・ブッシュ、ロバート・J・マーシャク 編 / 中村 和彦 訳 / 英治出版 /5,400円(税込) / 648ページ

池照 佳代(いけてる・かよ) 株式会社アイズプラス 代表取締役
池照 佳代

 約14年間、マスターフーズリミテッド、フォードジャパン、アディダスジャパン、ファイザー、ほかにて一貫して人事を担当後、2006年法政大学経営大学院修了と同時にアイズプラスを設立。人材・組織開発コンサルタントとして、主に企業向けに採用から教育、評価などの人事制度設計支援・コンサルティング、タレントマネジメントやダイバーシティ、女性活躍推進施策の企画・提供、エグゼクティブコーチング、EQ(感情知性)開発支援を提供している。このほか、NPO法人キーパーソン21(キャリア教育の全国普及) 理事、NPO法人IC(インディペンデントコントラクター)協会 理事として活動し、キャリア、働き方、起業についての支援や講演活動に従事。CDA(キャリアデベロプメントアドバイザー)、EQGA公認トレーナー。SEI EQアセッサー(国際認定資格)。The Bob Pike Groupプロフェッショナルトレーナー。
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