人事こそ最強の経営戦略
人事こそ最強の経営戦略
南 和気 著 / かんき出版 / 1,836円(税込) / 320ページ

 「経営はヒト・モノ・カネ」とはよく聞く言葉である。「ヒト」が最初に位置付けられているにもかかわらず、実際に「ヒト」を経営戦略の“いの一番”に位置付けている企業はどのくらいあるだろうか。

 本書は、「人事」を経営戦略として捉える視点、定義、そして各テーマの導入事例を教科書的に紹介している一冊である。中心テーマを「日本型・グローバル人事」とし、著者の人事現場の経験から重要度の高いキーワードを一つひとつ解説し、その背景や事例を各企業成熟度段階もふまえながら体系的かつ具体的に紹介している。

 「とにかくこれからはグローバルだ、よって人事もグローバル人事に」という号令を受け、戦略コンサルタントが持ち込む横文字のテーマの真意を理解する時間もなく、なんとなくの流れで制度や仕組みが変わっていく。そんな経験をしている担当者の方も多いだろう。

 事実、私もその一人だった。外国資本の企業にいながらも、本国から横文字で送られてくる命題と大量の解説文書についていくのに必死だった。おまけに、日本でご一緒する戦略コンサルタントから発せられるよどみなくカッコいい解説には、質問できる知識や経験さえ伴わないまま、目の前の仕事をこなしていた時期がある。結果、この著者の経験と同様に失敗する。担当者である自分自身が手法を表面的になぞるだけになり、継続的な人事の変革にはつながらないのである。私自身の場合は、現場と向き合う時間や多方面からの理解が不足し、施策が定着しなかった。

 実際にはこの経験から、現場や周囲、そして他社の人事担当者から話を聞く習慣が身に付いたのも確かである。だが、当時にこのような書籍があれば、少しでも知識を得て、本質理解を進めたうえで「グローバル人事」を進めることができたのでは、と悔やむばかりだ。

 ケーススタディーとして紹介されている各社担当者のインタビューは、各テーマの理解を一歩進めるうえでの生きた事例である。「変化に強い企業になるには」「イノベーションを生み出す組織をつくるには」そして、「日本企業の強みを打ち出すには」こんなキーワードを担う方々には、人事を仕事としている方に限らずすべての企業人にお勧めする、組織のグローバル化に向けた教科書的一冊である。

参考書籍

経営を強くする戦略人事
加藤 宏未、田崎 洋、金子 誠二 著 / 日本能率協会マネジメントセンター /2,484円(税込) / 320ページ

池照 佳代(いけてる・かよ) 株式会社アイズプラス 代表取締役
池照 佳代

 約14年間、マスターフーズリミテッド、フォードジャパン、アディダスジャパン、ファイザー、ほかにて一貫して人事を担当後、2006年法政大学経営大学院修了と同時にアイズプラスを設立。人材・組織開発コンサルタントとして、主に企業向けに採用から教育、評価などの人事制度設計支援・コンサルティング、タレントマネジメントやダイバーシティ、女性活躍推進施策の企画・提供、エグゼクティブコーチング、EQ(感情知性)開発支援を提供している。このほか、NPO法人キーパーソン21(キャリア教育の全国普及) 理事、NPO法人IC(インディペンデントコントラクター)協会 理事として活動し、キャリア、働き方、起業についての支援や講演活動に従事。CDA(キャリアデベロプメントアドバイザー)、EQGA公認トレーナー。SEI EQアセッサー(国際認定資格)。The Bob Pike Groupプロフェッショナルトレーナー。
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