コーチングの神様が教える「できる女」の法則
コーチングの神様が教える「できる女」の法則
サリー・ヘルゲセン、マーシャル・ゴールドスミス 著 / 斎藤 聖美 訳 / 日本経済新聞出版社 / 1,980円(税込) / 348ページ

 “You don’t have to be good, but you have to nice.”
 (優秀である必要はないよ、笑顔でにっこりできていたら大丈夫だから)

 25年以上も前になるが、事業会社への転職活動に苦労していた私に、外国人の知人がかけてくれた言葉である。プロとして売れるものをもっていない、知識や経験不足を自覚していた私に、彼は“女性社員”の採用に求めていた企業の期待を的確に伝えてくれた。

 25年たった今でも残る神話の一つは、「女性社員は、従順で愛想がよく、他の人の役に立ち、“いい人”であることを期待されること」である。これが、入社して日の浅い女性を「補佐的ポジション」につけることとセットになり、女性もこの期待を当たり前に受け入れて働いているのだ。こうした“女性社員”として採用された時の最善のアドバイスを、私を含め多くの女性がずっと守って仕事に就いてきた。

 本著で紹介される「キャリアの次のステップに前進しようとする女性を阻む行動」となる12のリストには、正直、衝撃を受けた。

 「これまで」女性が期待され美徳と考えていた仕事のやり方やスタンスが、「これから」のキャリアを重ねるには悪影響を及ぼす、というのである。これまでの仕事のやり方やスタンスは「悪癖」ともいえる。ただし、その裏側には、女性が発揮してきた共感力・誠実さ・勤勉さ・信頼性の高さがあり、こうした自らの努力は認めるべきだ。多くの女性がキャリアの次のステージに進む際に自分のマインド、思考、行動の癖を見直し、次のステージに立ち向かうにはどのようにしたらよいかを考えることが有効となる。 

 先月、とても光栄なことに著者のサリー・ヘルゲセン氏と会うことができた。

 彼女自身がこの本を書きたいと思った大きな理由の一つは、“素晴らしい仕事をしている女性がさらに影響力を持ち、さらに世界を良くしてほしいと思ったから”だと言う。彼女はとても情熱的に女性に向けたメッセージを発信し、そして参加者一人ひとりの話や質問に耳を傾け、彼女自身の経験やこれまでの知見をベースに丁寧に対応する様子が印象的であった。

 12の「悪癖」とされたリストは、日本で働く女性には耳が痛いほど「私たちのこれまで」の行動を指している。同時に、彼女がリサーチをした欧米女性の行動も同じようなリストになることに驚きを感じた。

 質問した私に、彼女は「文化背景の違いは多少ありますが、これまでに美徳とされていた多くのことがキャリアを阻む行動になっていることに気づく時期がきたのは世界共通。そして、自分でコントロールできる“自らの行動”を変えることで、私たちの世界が変わっていくことも世界共通だと信じている」と笑顔で応えてくれた。

 本著は、男女の違いなく組織のリーダーの価値を高められる示唆に富んでいる。自身が女性である方はもちろんだが、これから組織でさらに影響力を高め、世界をより良くしたいと願うすべての組織人にぜひ手にとっていただきたい一冊である。 

参考書籍

コーチングの神様が教える「できる人」の法則
マーシャル・ゴールドスミス、マーク・ライター 著 / 斎藤 聖美 訳 / 日本経済新聞出版社 / 1,980円(税込) / 349ページ

池照 佳代(いけてる・かよ) 株式会社アイズプラス 代表取締役
池照 佳代

 約14年間、マスターフーズリミテッド、フォードジャパン、アディダスジャパン、ファイザー等で一貫して人事を担当。2006年法政大学経営大学院在学中に同社を設立。人材・組織開発コンサルタントとして、企業向けに人材採用・教育、人事制度設計支援・コンサルティング、ダイバーシティ・女性活躍推進施策企画、エグゼクティブコーチング、EQ(感情知性)開発支援を提供している。加えて、NPO法人キーパーソン21(キャリア教育の全国普及)理事、NPO法人IC(インディペンデントコントラクター)協会理事として活動。キャリア、働き方、起業支援や講演も多数。CDA(キャリアデベロプメントアドバイザー)、EQGA公認トレーナー。SEI EQプラクティショナー・アセッサー(国際認定資格)。The Bob Pike Groupプロフェッショナルトレーナー。
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※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。