池照 佳代
アイズプラス 代表取締役

採用学
採用学
服部 泰宏 著 / 新潮社 / 1,404円(税込)/ 260ページ

 「優秀な人を採用してほしい」。採用に携わる人なら必ず一度は依頼される言葉であろう。では、優秀な人はどんな人で、うちの会社にとって本当に優秀で、そしてどこにいるのか?

 考えてみれば、組織で起こる多くの課題は「人」に関することにもかかわらず、外部から内部(自組織)に迎え入れる「人」を採用するに際して多くの企業では明確な「ロジック(物事の成り立ちに関する説明)」と「エビデンス(データの分析によって明らかにされた証拠・根拠)」は透明性をもって明確にはなっていない。

 採用に関する多くの手法やアセスメント(診断・査定ツール)が存在する今でも、まるで恋人や連れ合いを探すような「フィーリング」や「価値観」、はたまた「顔つきの良さや話しやすさ」などで合否が決まっているケースも多いのではないだろうか。

 本書は、現在私たちが抱えるこれらの採用の課題に対し、研究者である著者が「採用は科学することができる」をロジックとエビデンスを駆使して解く1冊である。

 私自身、採用業務には随分と長く、様々な業種で携わってきた。採用はいったいどこからスタートし、入り口ではどこまで多様化させるべきか、そしてアセスメントのプロセスをどのようにデザインしたうえで組織への定着を導くのか、これら1つひとつのプロセスが、企業によって異なるのである。

 事実、どこの企業でも採用要件の1つにあげられる「コミュニケーション力」は、企業によってもまたその中の部署や職種によっても「うちで求めるコミュニケーション」の具体的行動は異なっていたりするからである。

 本書中にある「変わりやすい能力」や「変わりにくい能力」の定義を見極め、採用の入り口はもとより社内での育成プロセスと合わせて採用をデザインすることが必要である。そして本書の主張は「採用のやり方に唯一最善の解は存在しない」である。これをやったら正解という手法は存在せず、どんな人を迎え入れて、どう活躍してもらい、どんな成果を一緒に追うのか、これらを自社ストーリーとして紡ぐことが「採用」という仕事なのであろう。

 本書では、豊富なデータや研究理論に加え多くの企業事例が紹介されており、自社のプロセスを見直すうえで非常に参考になる。読み進めながら、ぜひ自社の採用プロセスと自社で活躍する現在の社員、そして今後自社で一緒に活躍をするであろう人材を思い浮かべ、今後の自社なりの「採用(学)」に結び付けてほしい1冊である。

参考書籍

『採用を変える、組織が変わる』
高岡 幸生 著 / 無双舎 / 650円(税込) / 145ページ

池照 佳代(いけてる・かよ) 株式会社アイズプラス 代表取締役
池照 佳代

 約14年間、マスターフーズリミテッド、フォードジャパン、アディダスジャパン、ファイザー等で一貫して人事を担当。2006年法政大学経営大学院在学中に同社を設立。人材・組織開発コンサルタントとして、企業向けに人材採用・教育、人事制度設計支援・コンサルティング、ダイバーシティ・女性活躍推進施策企画、エグゼクティブコーチング、EQ(感情知性)開発支援を提供している。加えて、NPO法人キーパーソン21(キャリア教育の全国普及)理事、NPO法人IC(インディペンデントコントラクター)協会理事として活動。キャリア、働き方、起業支援や講演も多数。CDA(キャリアデベロプメントアドバイザー)、EQGA公認トレーナー。SEI EQプラクティショナー・アセッサー(国際認定資格)。The Bob Pike Groupプロフェッショナルトレーナー。
●アイズプラス https://is-plus.jp/
●ブログ http://isplus1.hatenablog.com/
●フェイスブック @iketeruisplus

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。