パーパス・マネジメント――社員の幸せを大切にする経営
パーパス・マネジメント――社員の幸せを大切にする経営
丹羽 真理 著 / クロスメディア・パブリッシング / 1,814円(税込) / 222ページ

 あなたの会社では、どんな指標を経営のKPIにしていますか?

本書は、この問いに対し、「仕事における幸せ」を指標においた会社経営、組織について解説している一冊である。

 「働き方改革」が声高に叫ばれるなか、毎日のようにメディアに挙がるのは残業時間の削減、リモートワークの浸透度、有給休暇の取得率といった「型」を変える、「場」を変える、「量」を変えるという議論である。本当にこれらが、企業が目指していることにつながるのか? 本書からは、現在私たちが改革として扱っているこれらの形あるものから、「社員一人ひとりの幸福度」という目に見えない度合い、だがそこに介在する人と組織が確実に影響を受ける度合いにフォーカスした経営への示唆と事例が示されている。そのためには、個人、組織のPurpose(目的)を共有すること、そしてこの取り組みを主導する新たな役職、CHO=Chief Happiness Officer の役割が重要と紹介している。

 そもそも「幸福」や「幸せ」は測れるものなのか? 本書では、GDP(国民総生産)に変わる指標としてGNH(国民総幸福量)や、HDI(人間開発指数)といった他国で用いられている指標が紹介されている。

 このような指標が出てきたのは、従来からある経済活動をモノサシとした指標だけでは国民の納得感が得られないことが一つの要因である。経済的に豊かであっても、そこにいる人は必ずしも豊かと感じていないということである。事実、GDPの高さとHDIの高さは相関していない。どちらに重点をおくことで最終的に企業は理念や目的を達成できるのか?

 これまで曖昧であまり語られることのなかった「社員の幸福」は、世界中で発表される様々なエビデンスの表出とともに確実に新しいモノサシとなっている。そしてこのモノサシは、「業績が上がれば、社員も幸せ」と信じて疑わなかったかつての教訓をも覆している。順序が逆である。研究結果からは、「幸せは成功に先行する」ことが分かる。

 「仕事場に感情を持ち込むな」、二十数年前の職場では当たり前に言われていた。私自身は、本書内で紹介されているGoogleの取り組みでも触れているEQ(感情知性)のトレーナーをしているが、とくに現在マネジメントの大多数を担う50歳前後のマネジメント層は「感情」を仕事場に活用することに抵抗があるケースが多い。泣く、笑う、楽しむ、これらの感情を表すことは、職場ではご法度とされた。誰もが感情を閉じ込め、目の前にある仕事を時間までこなし、そして夜の街で感情を爆発させていた時代だったのである。

 それが今や、職場で「幸福度」を意識し、「幸福度」を中心に考えることで個人も会社も同時に目的を達成する時代に変化しているのである。大きなパラダイム転換である。もし、あなた自身が、そしてあなたの会社がこの大きな転換を少しでも感じているのなら、ぜひ本書を手に取り「仕事の幸せ」について考えることからスタートしてみることをお薦めする。働く原点と働くことの意味をあらためて考えなおすきっかけとなる、すべての働く人にお勧めする一冊である。

参考書籍

NETFLIXの最強人事戦略~自由と責任の文化を築く
パティ・マッコード 著 / 櫻井 祐子 訳 / 光文社 / 1,728円(税込) / 248ページ

池照 佳代(いけてる・かよ) 株式会社アイズプラス 代表取締役
池照 佳代

 約14年間、マスターフーズリミテッド、フォードジャパン、アディダスジャパン、ファイザー等で一貫して人事を担当。2006年法政大学経営大学院在学中に同社を設立。人材・組織開発コンサルタントとして、企業向けに人材採用・教育、人事制度設計支援・コンサルティング、ダイバーシティ・女性活躍推進施策企画、エグゼクティブコーチング、EQ(感情知性)開発支援を提供している。加えて、NPO法人キーパーソン21(キャリア教育の全国普及)理事、NPO法人IC(インディペンデントコントラクター)協会理事として活動。キャリア、働き方、起業支援や講演も多数。CDA(キャリアデベロプメントアドバイザー)、EQGA公認トレーナー。SEI EQプラクティショナー・アセッサー(国際認定資格)。The Bob Pike Groupプロフェッショナルトレーナー。
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※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。