最高の働きがいの創り方
最高の働きがいの創り方
三村真宗 著 / 技術評論社 / 1,922円(税込) / 320ページ

 「働きがいのある会社」ランキングをご存じだろうか? 毎年、「働きがい」において一定水準を満たす企業をベストカンパニーとして選出しており、日本では2007年からスタートしている。今回の書籍は、このランキングの中規模部門で3年連続ベストカンパニー入りし、2018年度に第1位となった会社の「働きがいのある会社」に向けた考え方と具体的な取り組みを紹介した一冊である。

 著者で社長である三村氏は、自らの多様なキャリア経験の後に、著書で紹介されている株式会社コンカーの代表に就任した。「暗黒時代」と自らが呼ぶ、組織的にも事業としても「ひどい状態」を経て、直近5年間に「人材こそ最大の経営戦略」というコンセプトのもとに「働きがいのある会社」へのあるべき姿を描き、自ら組織を変えていったのである。読み進めるうちに、私には3つのキーポイントが見えた。

 一つ目は、トップが描く“あるべき”姿の全体像が可視(図式)化・言語化されていることである。それは何より、優先しているテーマが「働き方」よりも「働きがい」であることが大きな違いを生みだしている。多くの企業が働き方改革の名のもとに、真っ先に変えようと努力するのが労働時間や休日日数などの「量」の課題であるのに対し、「働きがい」として理念の浸透や文化といった目に見えない組織の「質」をテーマに改革の全体像(あるべき姿)を描いているのである。

 二つ目は、社員一人ひとりを主人公として、その取り組みを徹底的に検証、実施されている点である。一人の社員が会社の門をたたき、入社して抱える悩みや疑問、そして組織にいれば誰もが抱える葛藤などを、社員の視点に立ち、あくまで社員視点の「働きがい」を追求した丁寧な施策の数々には驚かされる。

 そして3つ目は、トップである社長の妥協のないこだわりとコミットメントである。実は、私自身がコンカー社の改革の中で人事制度作りに参加させてもらい、この取り組みのメンバーに末席ながらご一緒させてもらっている。私は様々な企業で改革のお手伝いをしているが、トップが、方針やポリシーへの関わりだけにとどまらず、取り組みの細部にまでこだわりをもって関与するケースは珍しい。何せ等級(ジョブグレード)や教育制度の文言一つひとつにも「この言葉で社員がどう感じるか」「伝えたいことの真意が伝わるか」を我々コンサルタントも含めて時間をかけて徹底議論した。そんな姿勢から繰り出される取り組みには、一つひとつこだわりのストーリーが見えるから、具体的で興味を引くので、その興味が読者の当事者感覚を引き出し、ますます、その“こだわり”を自ら試してみたくなる。そしてまた社員一人ひとりが当事者として自らが感じた改善点を提案してくる。そんなプラスの循環が、この改革から見えてくる。 

 「働きがいのある会社1位」は彼らの改革の通過点に過ぎない。それでも、ここまで自社の改革の考えや手法をつぶさに開示している書籍は読み応えがある。自社で改革を進めたいリーダー、様々な取り組みについて考察を深めたい人事担当者、そしてすべての「ひと」に関わる経営者におすすめする一冊である。

参考書籍

世界でいちばん働きがいのある会社
マイケル C. ブッシュ & GPTW調査チーム 著 / 日経BP社 / 1,728円(税込) / 272ページ

池照 佳代(いけてる・かよ) 株式会社アイズプラス 代表取締役
池照 佳代

 約14年間、マスターフーズリミテッド、フォードジャパン、アディダスジャパン、ファイザー等で一貫して人事を担当。2006年法政大学経営大学院在学中に同社を設立。人材・組織開発コンサルタントとして、企業向けに人材採用・教育、人事制度設計支援・コンサルティング、ダイバーシティ・女性活躍推進施策企画、エグゼクティブコーチング、EQ(感情知性)開発支援を提供している。加えて、NPO法人キーパーソン21(キャリア教育の全国普及)理事、NPO法人IC(インディペンデントコントラクター)協会理事として活動。キャリア、働き方、起業支援や講演も多数。CDA(キャリアデベロプメントアドバイザー)、EQGA公認トレーナー。SEI EQプラクティショナー・アセッサー(国際認定資格)。The Bob Pike Groupプロフェッショナルトレーナー。
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※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。