VUCA 変化の時代を生き抜く7つの条件
VUCA 変化の時代を生き抜く7つの条件
柴田 彰、岡部 雅仁、加藤 守和 著 / 日本経済新聞出版社 / 1,760円(税込) / 256ページ

 「私の感じたこと……私の主観でよろしいのですか?」

 ある企業でリーダーシップワークショップを毎年担当している。感情と知性をベースに、一人ひとりが「自分らしさ」と「リーダーシップ」を学び、語り、高めていくこのワークショップでは、自分が何を感じ取り、考え、意見とするか。それを発信することが期待される。だが多くの現場リーダーが、主語を「私」にすることに慣れていないケースをよく見かける。最初のうちは、「会社は……」「うちの部は……」と主語が自分にならないのだ。「これまで」は会社や組織が決めた(または、一部のトップ層が決めた)ことをチームに伝えることが彼らリーダーの役割であり、個人の視点や見解が必要とされてこなかったのである。

 ビジネス環境が大きく変わろうとしている。本書の題名にもあるVUCAとは、Volatility:不安定さ、Uncertainty:不確実さ、Complexity:複雑さ、Ambiguity:曖昧さ、を表す英単語の頭文字からなる造語で、現在のビジネス環境を表現する象徴となった。この変化にともない、これまでの組織に必要とされた人材要件ではなく、「これから」はこのVUCAの時代に対応する「主体的にキャリアを描き、自らの力で勝ち取っていく人材」が期待される。すなわち、仕事ができる人の定義や、ビジネスの現場で期待される人材に対する前提とルールが変わったのである。

 VUCAの時代に成長できる人材に共通する7つの条件を紹介しているのが本書である。紹介されている7つの条件は、つい少し前の「会社主導」のキャリア時代とは異なり、「個人主導」のキャリアへの転換と言える。これをネガティブに捉えるか、ポジティブに捉えるかは本人次第だろう。ただ一つ言えることは、人生100年時代とも言われ、私たちがビジネスの世界に身を置く時間は長ければ50年にも及ぶ。そして、VUCAという言葉が表す不確実で曖昧な変化の時代もどうやら止められないようだ。それならば、昔を懐かしむよりも楽しむ気持ちでキャリアを描く方を選びたい。本書は、「これから」の変化を見据え、自らの、そして仲間のために人事施策やプログラムを考察する方々にぜひ手にとっていただきたい一冊である。

参考書籍

本当は大切なのに誰も教えてくれないVUCA時代の仕事のキホン
河野 英太郎 著 / PHP研究所 / 1,540円(税込) / 224ページ

池照 佳代(いけてる・かよ) 株式会社アイズプラス 代表取締役
池照 佳代

 約14年間、マスターフーズリミテッド、フォードジャパン、アディダスジャパン、ファイザー等で一貫して人事を担当。2006年法政大学経営大学院在学中に同社を設立。人材・組織開発コンサルタントとして、企業向けに人材採用・教育、人事制度設計支援・コンサルティング、ダイバーシティ・女性活躍推進施策企画、エグゼクティブコーチング、EQ(感情知性)開発支援を提供している。加えて、NPO法人キーパーソン21(キャリア教育の全国普及)理事、NPO法人IC(インディペンデントコントラクター)協会理事として活動。キャリア、働き方、起業支援や講演も多数。CDA(キャリアデベロプメントアドバイザー)、EQGA公認トレーナー。SEI EQプラクティショナー・アセッサー(国際認定資格)。The Bob Pike Groupプロフェッショナルトレーナー。
●アイズプラス https://is-plus.jp/
●ブログ http://isplus1.hatenablog.com/
●フェイスブック @iketeruisplus

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。