池照 佳代
アイズプラス 代表取締役

EQ「感じる心」の磨き方
EQ「感じる心」の磨き方
高山 直 著 / 東洋経済新報社 / 1,728円(税込) / 234ページ

 前回の書評は「仕事のIQ」がテーマだったが、今回は「仕事のEQ」を中心に紹介する書籍となる。著者の高山氏は日本のビジネス界にEQを導入した第一人者として過去25年にわたり、理論のみならず開発トレーニングの普及に尽力している。そう言えるのも、私自身がこのEQ(感情能力)の必要性・重要性を人材・組織開発の現場から気づき、この高山氏の元で学んだトレーナーの1人であるからである。

 私自身の経験はさておき、EQについてはこの理論を米国で提唱した2人の心理学者(エール大学とニューハンプシャー大学教授)が本書の冒頭部分で記した「私たちは感情を無視できますが、感情は存在し続けます。一方で感情を上手に管理し、利用する方法を学ぶこともできます」が一番の理解につながる。これまで長年にわたって日本でEQの導入をリード、支援してきた著者が、今回本著でその根幹となる部分として解説しているのがEQの基本ともいえる「感じる力」である。

 ビジネスの中で「感じる力」がどれほどの重要性をもつのか、を中心に、EQの定義や日常生活の中での位置づけや事例で紹介されている。例えば、一般的に“EQが高い人”は優秀なのか、IQとの関係はあるのか、意思決定やリーダー像との関係など、私自身が現場でもよく質問を受ける内容についての記載が多くある。

 また、EQ=「ポジティブ」や「明るさ」との結びつきを連想することが多いようだが、ネガティブな感情との付き合い方や対応方法なども著している。職場ではむしろ、この「負の感情」との付き合い方が問題の多くではないだろうか。また、EQの特徴の1つは、「スキルとして開発が可能」という部分である。本書では「感情マネジメント力」を開発する方法として具体的な自己トレーニング法も紹介されており、自らで実践することが可能になっている。

 今年は、本書で推薦の言葉も著されているEQの研究者でもある教授らが来日し、私自身も高山氏とともにお会いする機会を得た。グーグル社をはじめとする米国企業でのEQ導入事例をはじめ、ビジネス界にとどまらず医療、教育、メンタル、人間関係と様々な分野に、感情によるマネジメントが世界的な広がりを見せていることが発表された。

 今年の世界経済フォーラムでもEQは「今後必要になるトップ10スキル」に初めて入っており、今後はますます注目が予想される分野となる。人事、人材育成担当者においては、組織、職場、日常において、“無視はできても存在はし続ける「感情」のとらえ方”について、ぜひ一読をおすすめするものである。

参考書籍

『EQ こころの鍛え方 行動を変え、成果を生み出す66の法則』
高山 直 著 / 東洋経済新報社 / 1,728円(税込) / 222ページ

池照 佳代(いけてる・かよ) 株式会社アイズプラス 代表取締役
池照 佳代

 約14年間、マスターフーズリミテッド、フォードジャパン、アディダスジャパン、ファイザー等で一貫して人事を担当。2006年法政大学経営大学院在学中に同社を設立。人材・組織開発コンサルタントとして、企業向けに人材採用・教育、人事制度設計支援・コンサルティング、ダイバーシティ・女性活躍推進施策企画、エグゼクティブコーチング、EQ(感情知性)開発支援を提供している。加えて、NPO法人キーパーソン21(キャリア教育の全国普及)理事、NPO法人IC(インディペンデントコントラクター)協会理事として活動。キャリア、働き方、起業支援や講演も多数。CDA(キャリアデベロプメントアドバイザー)、EQGA公認トレーナー。SEI EQプラクティショナー・アセッサー(国際認定資格)。The Bob Pike Groupプロフェッショナルトレーナー。
●アイズプラス https://is-plus.jp/
●ブログ http://isplus1.hatenablog.com/
●フェイスブック @iketeruisplus

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。