企業で行う研修において、参加者は基本的に大人です。子どもに対する教育ではなく、大人を対象にした研修を行う場合、どんな点に留意すればよいでしょうか。以下の4点にまとめました。

1. 一人の人間として尊重する
2. 学習プロセスに関与してもらう
3. 内容が実践的である
4. 繰り返しによって強化する

 では1つずつ見ていきましょう。

1. 一人の人間として尊重する

 講師と参加者の関係は上下関係ではありません。講師が「先生」ということではなく、「参加者の学びを支援する人」です。お互いに対等な関係で、その役割が異なるだけです。

 また、参加者は、物理的にも心理的にも快適であることが必要です。物理的な快適さとは、パーソナルスペース、室温など安心して快適に学べる環境のレベルであることが大切です。これについての詳細は、連載第25回「受講者の物理的な快適さに配慮して研修効果を上げる」をご参照ください。

 心理的に過度なストレスがかかっていると、学習能力が低下します。「突然指名される」「参加者全員の前で何かを行わなければいけない」など、嫌な汗をかくような緊張感や、自尊心が傷つくような体験をさせることは避けましょう。

 大人である参加者は、これまでに豊富な経験をしていますし、知識も持っています。これらを無視してデザインするのではなく、活用できるデザインにします。つまり、何も知識がない前提で講師が一からすべてを説明しようとせず、参加者の知識や過去の経験を尊重し、それを生かすようにします。

 例えば、講師が説明をする前に、参加者に過去の経験を共有してもらい、強みや課題を認識したうえで、課題を解決するために役立つ情報を講師が提供するのです。あるいは、持っている知識を活用してワークに取り組んでもらい、解決できなかったことを解決するために、講師が知識を補うのです。

 新入社員であっても大人です。営業や販売はしたことがないかもしれませんが、客になったことがないという人はいないでしょう。アルバイトや部活動などで、チームワークやリーダーシップの経験もあるはずです。そうしたことを尊重し、うまく引き出したいものです。

2. 学習プロセスに関与してもらう

 講師がすべてを指図するのではなく、参加者に選択肢や決定権を提供します。例えば、座席、ペアになる相手、発言の順序など、参加者が自分たちで選択したり決めたりできることは数多くあります。

 「では、発表はこちらのグループからお願いします。次はそちらのグループにお願いします」と講師がいちいち指図するのではなく、「最初に発表してくださるのはどちらのグループでしょうか?」と促してみましょう。

 また、ケーススタディーやロールプレイなどは複数用意し、どれに取り組みたいかを選んでもらうようにします。より自分に役立つもの、より実践で活用できるものを選択肢の中から選ぶことで、主体性が高まることが期待できます。さらに、グループによって選ぶケースが異なると、限られた時間の中で複数のケースを検討することもでき、お互いの発表についても興味を持って聞くことができるといったメリットも生まれます。

 さらに、研修運営について役割を分担してもらうのもよいでしょう。参加者は「お客様」ではありません。学習環境をよい状態に保つことに関わってもらいましょう。例えば、以下のような係を設け、各チームで担当者を決め、自主運営してもらいます。

●エアコン係:快適な温度が保たれるようエアコンを調節する
●配布物係:資料や文房具などをチームに届ける
●ハウスキーパー:机の上を整理整頓する
●休憩係:休憩時間終了の時に遅刻する人が出ないよう、声がけする