その際の問いかけ方、質問スキル、傾聴スキルなどを研修で学ぶのですが、このように新しいことを学ぶだけですと、アンラーンのないまま上書きしていることになります。ですが、これまでの行動パターンを変えるうえでは、「聞かれたらアドバイスする」という行動をいったんリセット・消去した方がよい、というのがアンラーンの考え方です。

 実際にはこうしたアンラーンの機会がないまま、新しい知識やスキルを学ぶデザインになっている研修がとても多いように思いますが、皆さんの行っている研修はいかがでしょうか。

どうやってアンラーンするか

 ではどうやってアンラーンするのでしょうか。

 「そういう対応はやめましょう」と講師が投げかけるだけでできる、というほど簡単なことではないのはもうご想像がついていると思います。見えてしまった絵を見えなくするのは、そんなに容易ではありません。

 具体的な方法に落とし込むにあたって、次の3点をどう実践するかを検討するとよいでしょう。

1.現実を直視する

 新しい知識・スキルの習得や行動を変えることが必要になっているからには、現状のままでは何かが足りない、あるいは、よくない結果を得ていることがあるはずです。その現実を、なんとなく分かっているレベルではなく、実績などの数値、ステークホルダーの声、などを通して直視してもらう方法を見つけましょう。例えば、従業員調査やエンゲージメント関連の数字、上司に対する部下の期待や不満の声、などが該当します。

2.なぜ現状ではうまくいかないか、新しい方法の方がうまくいくか、納得する

 そのうえで、現状では何がうまくいっていないか、変えた方がよいのは何で、それはどのような理由からか、新しい方法にした時に得られる成果やメリットは何か、などについて、一般論としてではなく、自分のこととして納得できるようにします。

 そのためには、現状と新しい方法の差を体感・実感するという方法は、インパクトがあります。理屈だけではなく、感情も伴って納得するので効果的です。

 また、ボブ・パイクの学習の法則によると、「人は自分が口にしたことは受け入れやすい」ので、講師が語るよりも、参加者自身が両方のメリット・デメリットを整理して、自分の言葉で語るような工夫も有効です。これまでのやり方を続けることのデメリット、新しい方法に変えることで得られるメリットなどを自分たちで考えてもらい、自分たちの言葉で発してもらうのです。

3.具体的な行動に落とし込む

 最終的には、「今後は意識する」というような抽象的な言葉で終わらせず、具体的に何をするか行動レベルに落とし込んでもらいます。その際も「人は自分が口にしたことは受け入れやすい」ので、自分で自分の行動を決めてもらい、発言してもらいます。