例えば、研修の組み立て順序について考えます。講師が説明をしてからグループディスカッションやワーク、ロールプレーを行うのがごく一般的な順序ですが、最初に課題に取り組み、その後で講師の解説を聞くという順序に変えるとどうでしょうか。講師から聞く解説内容にあまり違いはなくても、後者の方は「自分たちが出した答えが合っているかを確かめる」要素が強くなるため、ただ漠然と説明を聞くのとは受け止め方が変わります。

 「人は受け身な状態が10分以上続くと興味や集中がそれ始める」のが脳科学的な知見ですので、それる前に問いかけを入れるなどして、興味・集中を持続するデザインにしておきます。

 一度しか触れていない情報より、間隔を空けて繰り返した方が長期記憶に定着しやすいので、大事なポイントは、振り返る機会をきちんと組み込んだデザインにします。

 一部の活発な人だけではなく、全員が巻き込まれ、自分自身の学びに主体的に関わるような環境を作るために、リーダーなどの役割は固定せず全員が何かしらの役割があるように運営します。またペアや3人、5~6人と、ワークやディスカッションを行う人数を変えるなど、相手も固定しない運営方法にします。

 このように、周到にデザインされた研修であれば、講師のデリバリースキルに大きく依存することなく、効果的な研修を行うことが可能になるのです。

 効果的な研修を行うためには、講師のデリバリースキルに依存するのではなく、このようなインストラクショナルデザインをしっかりと作成しておくことが不可欠です。

参考:中村 文子氏の書籍

研修デザインハンドブック
研修デザインハンドブック
中村 文子、ボブ・パイク 著 / 日本能率協会マネジメントセンター / 3,024円
社内講師の方や、すでに研修講師をしている方、教員、研修を企画する立場の方にインストラクショナルデザインのノウハウをまとめた本。
講師・インストラクターハンドブック
中村 文子、ボブ・パイク 著 / 日本能率協会マネジメントセンター / 3,024円
講師のスキルアップのためのノウハウをまとめた本

中村 文子(なかむら・あやこ) ダイナミックヒューマンキャピタル株式会社 代表取締役
中村 文子

 大阪府出身、神戸市外国語大学 外国語学部 英米学科 卒業。マイクロソフト株式会社名古屋営業所 勤務を経て、P&Gジャパン、ヒルトン東京ベイにて人材育成・組織開発に従事。2005年より現職。2006年にASTDのカンファレンスで人材育成の世界的権威、ボブ・パイク氏のセッションに初参加、大きな衝撃を受ける。トレーナー認定のプロセスを経て、2007年秋、日本人初のトレーナーとして認定される。専門分野は、トレーナー養成、ホスピタリティ、管理職研修、ビジネスコミュニケーションスキル研修など。ホテル業界、製薬会社、電機メーカーなどの業界で、活動中。早稲田大学エクステンションセンター、日経ビジネススクール、日本能率協会にて、講師実績あり。
●ダイナミックヒューマンキャピタル
http://www.d-hc.com/
https://www.facebook.com/DynamicHumanCapital/
●中村文子ブログ
http://www.d-hc.com/blog

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。