中村文子
ダイナミックヒューマンキャピタル代表取締役

 唐突ですが、3人のレンガ職人の話を聞いたことがありますか? 要約するとこういうストーリーです。通りかかった際に見かけた、レンガを積んでいる人に「何をしているのか」を問いかけたところ、最初の人は「レンガを積んでいる」と答え、2番目の人は「壁を作っている。この仕事で家族を養っている」と答え、3番目の人は「歴史に残る大聖堂を造っている」と答えた、という話です。仕事を目の前の作業として捉えている1番目の人、生活のために働いている2番目の人とは違って、3番目の人は仕事の目的を社会貢献として捉えているので、働きぶりに差が出るという内容で引用・活用されることが多い話です。

 では、人材開発担当者であるみなさんの仕事はなんでしょうか?

 研修の企画運営(業者選定から当日の事務局運営まで)や、研修講師として登壇するというのは、上記の話でいうと、「レンガを積む」「壁を作る」ということにあたるでしょう。とはいえ、現実は、「レンガを積む」「壁を作る」にあたる仕事に追われているかもしれません。

 ではレンガ職人の3番目にあたる仕事は、人材開発担当者にとってはなんでしょうか。

●会社に貢献できる人材を育成する
●次世代を担うリーダーを育成する

などでしょうか。先ほどの「企画運営」や「研修登壇」よりは少し良くなりましたが、これでもまだまだ「壁を作っている」レベルではないでしょうか。

 では、グローバル標準ではどのようなコンセプトがあるのか、目を向けてみましょう。

 こちらは、ATD(Association for Talent Development 旧ASTD : American Society for Training & Development 米国人材開発機構)が定義する、人材開発担当者に求めるコンピテンシーです。

■The ATD Competency Model(TM)

 研修を作成したり、登壇したりするという実技的なことももちろん入っていますが、ビジネスに対してどのような影響を与えるかを分析したり、変革を推進したり、組織の人材戦略に沿ってビジョンを掲げて計画を立てて遂行するというような要素も含まれています。つまり、戦略的な視点を持って動き、成果を出せるかということです。