接客、販売、部下とのコミュニケーションなど、誰かとの対話についての研修だとどうでしょうか。写真や映像で現状の課題を見てもらう方法ももちろん活用できますが、研修の場で疑似体験することもインパクトがあります。「よい」とされる対話と、「よくない」とされる対話のシナリオを用意しておいて、それを実際にその場で読んで違いを体感してもらいます。これは、言葉で説明されるのとは異なり、それぞれの立場で対話を体験することで感情を生みます。用意されたシナリオだと分かっていても、やっぱりうれしかったり、逆に不快な思いをしたりするのです。頭で理解するのではなく、感情を伴うことで、行動変容へのモチベーションによりつながります。

 このように、理屈ではなく感情が変化へのモチベーションにつながるような研修デザインの工夫をしたいものです。

変化への気持ちを持続できてこその成果

 さらに考えたいのが、そこで生まれた変化しようという気持ちをいかに持続させるかです。これもよくあるのが、研修の時には「よし!やるぞ!」と思ったものの、職場に戻ると持続できないというパターンです。

 研修の場でスキルとして練習できる内容であれば、スキル練習を十分行うことはサポートになります。ロールプレイなどで練習し、新しいスキルが習得でき、自信もついていれば実践してもらえそうです。難しいのが、研修の場ではスキルの練習ができないような内容でしょう。例えば先に挙げた「リーダーシップスキル」がそうではないでしょうか。何かの状況でどう行動するのか、想定や検討をすることはできても、実際にその場面を再現して練習するのは難しいかもしれません。だからつい「ぜひ職場に戻って実践してください」と講師が促す、ということになりがちなのです。ですが、それではあまりにサポートとして脆弱です。

 研修の場で練習することが難しい場合は、研修終了後に必ず実践してその成果を報告するような場をあらかじめ設定しておくとよいでしょう。リーダーシップ研修で学んだことを職場で実践する、その成果や部下の反応を報告する、ということをあらかじめデザインのなかに組み込んでおいて、予告します。可能であれば、フォローアップ研修などの機会も設定します。さらに可能であれば、部下にヒヤリングやアンケートを実施するなどして、部下側の反応を収集したり、フォローアップの場に部下が同席したりすることもインパクトがあります。このようなことを予告しておくことで、研修に対する取り組み姿勢にもよい影響が期待できます。

 人は、理屈だけでは動きません。研修が終わったら熱が冷めて結局何も変化していない、という状況が起きないよう、「見て、感じて、変わる」を実現できる研修デザインを工夫しましょう。

参考:中村 文子氏の書籍

研修デザインハンドブック
研修デザインハンドブック
中村 文子、ボブ・パイク 著 / 日本能率協会マネジメントセンター / 3,024円
社内講師の方や、すでに研修講師をしている方、教員、研修を企画する立場の方にインストラクショナルデザインのノウハウをまとめた本。
講師・インストラクターハンドブック
中村 文子、ボブ・パイク 著 / 日本能率協会マネジメントセンター / 3,024円
講師のスキルアップのためのノウハウをまとめた本。

中村 文子(なかむら・あやこ) ダイナミックヒューマンキャピタル株式会社 代表取締役
中村 文子

 大阪府出身、神戸市外国語大学 外国語学部 英米学科 卒業。マイクロソフト株式会社名古屋営業所 勤務を経て、P&Gジャパン、ヒルトン東京ベイにて人材育成・組織開発に従事。2005年より現職。2006年にASTDのカンファレンスで人材育成の世界的権威、ボブ・パイク氏のセッションに初参加、大きな衝撃を受ける。トレーナー認定のプロセスを経て、2007年秋、日本人初のトレーナーとして認定される。専門分野は、トレーナー養成、ホスピタリティ、管理職研修、ビジネスコミュニケーションスキル研修など。ホテル業界、製薬会社、電機メーカーなどの業界で、活動中。早稲田大学エクステンションセンター、日経ビジネススクール、日本能率協会にて、講師実績あり。
●ダイナミックヒューマンキャピタル
http://www.d-hc.com/
https://www.facebook.com/DynamicHumanCapital/
●中村文子ブログ
http://www.d-hc.com/blog

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。