中村文子
ダイナミックヒューマンキャピタル代表取締役

 今回は研修の教材について考察します。研修教材について、最初に強調したいのが次の点です。配布する教材と、スクリーンに投影する教材は、異なる目的で使うものなので、投影するスライドをそのまま印刷して配布するのは止めましょう!

 皆さんの組織ではいかがでしょうか? 研修会社などいわゆる研修のプロが作成している研修ではさすがにないと思いますが、社内研修では、スライドをそのままプリントアウトして研修教材として配布しているケースをまだよく見かけます。

スライドとワークブックの目的はどこが違うのか

 スクリーンに投影する教材は、以下スライドと表現します。そして、配布する教材は、ワークブックと表現します。では、スライドとワークブックはどのような目的を持つのでしょうか。

 スライドは投影して使うものですので、視覚に訴える情報です。一方、講師の説明は聴覚を使って受け取ります。この、視覚と聴覚をうまく組み合わせて活用することで、記憶に定着する補佐にもなります。つまり、目から入ってくるスライドは、耳から入ってくる講師の説明を補佐する役割です。

 まとめると、スライドの目的は、

・学びや理解を促進し、記憶への定着を補佐するような視覚情報を提供する

ということになります。

 一方で、ワークブックは研修中から参加者の手元にあり、研修後も参加者の手元に残る資料です。ですので、こちらは、研修中にメモを取ったり、全部書き留めたりできないような詳細な説明や参考情報があり、後日参照できると便利です。また、自分で手書きしたことは記憶へ定着しやすいということもありますので、大事なポイントやキーワードは空欄になっていて、手書きで埋める形式になっていると効果的です。

 ということは、ワークブックの目的は、

・メモを取ったり、空欄を埋めたりする
・後日参照できるような、詳細な情報や説明を掲載しておく

ということになります。

スライドの印刷配布で起きる問題

 スライドをそのまま印刷してワークブックと兼用にしてしまうと、何が問題なのでしょうか? もっとも典型的な例として、スライド3枚が縦に並んでいて、スライドの右側にノートスペースがある配布資料をよく見かけるので、先ほど述べた目的の違いを考えると、どういう問題が起きるかを考えましょう。

 まず、後日参照できるような、かつ十分な情報をスライドで提供しようとすると、必然的にスライドに掲載する情報が多くなります。すると、投影した際に文字が小さくて見えないようなスライドになってしまうのです。手元に同じものがあるので、見えない場合はそれで補えばいいのかもしれませんが、すると今度は参加者がみんな手元ばかりを見ていて、だれも顔を上げなくなります。これでは投影している意味がありませんし、講師とアイコンタクトもできません。

 また、視覚情報が多いスライドを使用すると、書かれている情報を読むことに集中する参加者が多くなります。脳はマルチタスクできませんので、視覚から入ってくる情報を処理している間は、聴覚から入ってくる情報処理がおろそかになり、結果として講師の説明内容は聞き逃してしまうことになるのです。