役割定義書やジョブディスクリプションといった人事制度関連の文書が存在しない場合は、よりどころにする根拠がなく、より難しいと思います。その場合、研修の企画を行う機会を利用して、その役職に期待されることを明確にするための対話の場をつくっていきましょう。人事の観点から承認された正式文書にまとめることはできなくても、組織内である程度の納得が得られるものにして、それを研修企画の根拠としましょう。

②知識・スキル・行動においての違いをはっきりさせる

 役割定義などは比較的、抽象的な文書が多いように見受けられます。例えば、 「管理職としての自覚を持ち、担当部署を管理する」 って、いったい何をどうすることを指しているのでしょうか? これでは具体的な行動や求められるスキルが見えません。研修をデザインするには、より具体的に求められる知識や習得すべきスキル、さらには日常の行動として期待されることに落とし込む必要があります。例えば、

「組織全体のビジョンや戦略を、自分の部署・チームの業務に落とし込み、その関連性を説明することができる」
「部下の状況に合わせて、適切なコーチングを行う」

というぐらい具体的な表現になると、昇格前と昇格後で何が変わるのかが理解でき、さらに、研修でどんな内容を取り上げるのかのイメージがわいてきます。

 こうしたプロセスを経て研修の内容を企画することで、新しい職務に就くことでなぜ研修が必要なのか、その必要性に納得が得られやすくなると思います。

 さらに、これらをもっとビッグピクチャーと結びつけるのです。つまり、ビジョンやミッション、この組織が置かれている状況や戦略などとの関連を見せるのです。課長という役職の方がこういう行動を取って成果を出すことがなぜ必要なのかを、「一般論」として語ったり、「こうあるべき」とするのではなく、組織の戦略を実行して成功するためにどう関わることなのかが見えると、ぐっと納得感が高まり、研修の意義も高まるはずです。これができているかどうかが単なる「研修機会提供者」なのか、ビジネスに貢献するアドバイザーなのかの差をつくります。

 では次に、研修後の課題について考えます。

課題は実践である

 研修後の課題は、学んだ知識・スキルを実践し、行動に反映させることが目的です。言い換えると、新しい役職で求められていることを実践することなのです。決して、「研修でせっかく学んだからやってみましょう」というレベルの話ではなく、「今求められていることを研修で学んだので、それを実践しましょう」ということなのです。その位置づけにすることで、「余計な負担」という意識が払しょくできるのではないでしょうか。