中村文子
ダイナミックヒューマンキャピタル代表取締役

 研修で講師は参加者を巻き込むために質問を投げかけます。また、参加者同士で話し合った結果を発表してもらいます。よくあることですが、その時の参加者からの発言が思わぬ方向にずれてしまっていたり、否定的な意見が出てきたりして、軌道修正が大変ということがあります。そうした軌道修正が難しいので、質問を投げかけてのグループディスカッションが不安であるという講師もいらっしゃいます。

 これは多くの場合、参加者側に問題があるわけではなく、投げかける質問の質を高めることで解決できる問題です。

クローズドな質問とオープンな質問の使い方

 では具体的に見ていきましょう。質問にはクローズドな質問とオープンな質問があります。クローズド過ぎる質問は、求めている答えが見え見えで、誘導尋問になりやすいリスクがあります。逆に、オープンすぎる質問は、答えが求めている方向から外れやすいというリスクがあります。

 例えば「効果的なコミュニケーションは仕事を進めるうえで大切でしょうか?」という質問は、「はい」か「いいえ」で答えるタイプのクローズドの質問です。研修でこの質問を投げかけて、「いいえ」の答えを期待していないのは明白過ぎて答える気にもなりません。

 では、「効果的なコミュニケーションとはどのようなコミュニケーションでしょうか?」という質問はどうでしょうか。これはオープンな質問で、一見良い質問に聞こえるかもしれませんが、果たしてそうでしょうか。

 この問いかけに対して、参加者からどのような答えが返ってくることが予測できますか? 答えの例として、
「5W1Hがはっきりしていて分かりやすい伝え方」
「タイムリーな情報共有」
「結論が先にあって分かりやすい伝え方」
「ロジックがしっかりしている話し方」
「傾聴の姿勢で人の話を聞く」
「相手に共感を示すことができている聴き方」
などと、コミュニケーションスキル研修においてはお手本のような答えが返ってくる可能性もあります。

 しかし、以下のような回答が返ってくる可能性もあるのではないでしょうか。
「字がきれいで読みやすい」
「聞き取りやすい発音」
「声が大き過ぎず、小さ過ぎず、ちょうどいい」
「口癖や流行り言葉がなくて、きれいな話し方」
これらはすべて「間違い」とは言えませんが、おそらくコミュニケーションスキルの研修で求めている答えからは外れているでしょう。これは質問がオープン過ぎることが大きな要因の1つです。