3.継続的に向上させられる環境があること

 3つ目は、環境面です。

 研修前後も含めたデザインが大切なことは以前にも述べた通りです。
■第12回「研修はイベントではなくプロセスである」

 新しく学んだことが定着し、無意識に行動できるようになるには、18日~8カ月かかるといわれています。その期間は試行錯誤や練習する機会が必要なので、それを見守り、支援してくれる環境が必要なのです。

 キーパーソンは直属の上司です。上司は、そうした機会を作り、支援し、励まし、研修参加者の行動変容をサポートする重要な役割を担っています。「上司によって、協力的な人もいれば、そうではない人もいる」というのが、研修担当者からよくお聞きする悩みですが、そこは「仕組み化」することが大切です。上司の人柄や力量に依存するのではなく、研修前後に上司が部下に何を伝え、何を行ってもらうかをデザインし、仕組み化してしまうのです。

 もう1つ見逃せないのが、上司がお手本を示すことができるか、という点です。部下である研修参加者が学んだことを、上司が日常的に実践できていなければ、研修での学びの説得力がありませんし、研修後の上司の指導も期待できません。

 例えば、ロジカルシンキングを部下が研修で学んだという場合を考えてみます。部下は研修後に、課題解決や提案を行う際に学んだ内容を実践しようとするでしょう。部下が、プレゼンテーションや資料作成・提出を行った際、それに対して上司が良いフィードバックができるかが鍵なのです。

 ロジカルシンキングは研修で学んだ後に、そうした実践の場で鍛え続けていくことでスキルとして定着していくものなので、上司がお手本となり、良いフィードバックを行うことで、その定着をサポートすることができるのです。

 研修を企画する際に、「実際には使っている人があまりいない知識・スキル」を研修という場を使って新しく学んでもらいたい、という発想をするのは要注意です。例えば上記のロジカルシンキングのように、研修では基礎的なことを学んで帰っても、実際の職場で良いフィードバックがもらえないと、鍛え続けることができないため、レベルを向上させていくことが難しくなってしまうからです。

 以上、研修で学んだことを実践する率を高めるための3つのポイントを考察しました。皆様が企画・実施される研修の内容は何パーセントくらい活用されているでしょうか。それを高めるためのご参考になれば幸いです。

参考書籍:
講師養成講座で活躍する著者 中村 文子氏が、講師のスキルアップのためのノウハウをまとめた本
講師・インストラクターハンドブック
中村 文子、ボブ・パイク 著 / 日本能率協会マネジメントセンター

中村 文子(なかむら・あやこ) ダイナミックヒューマンキャピタル株式会社 代表取締役
中村 文子

 大阪府出身、神戸市外国語大学 外国語学部 英米学科 卒業。マイクロソフト株式会社名古屋営業所 勤務を経て、P&Gジャパン、ヒルトン東京ベイにて人材育成・組織開発に従事。2005年より現職。2006年にASTDのカンファレンスで人材育成の世界的権威、ボブ・パイク氏のセッションに初参加、大きな衝撃を受ける。トレーナー認定のプロセスを経て、2007年秋、日本人初のトレーナーとして認定される。専門分野は、トレーナー養成、ホスピタリティ、管理職研修、ビジネスコミュニケーションスキル研修など。ホテル業界、製薬会社、電機メーカーなどの業界で、活動中。早稲田大学エクステンションセンター、日経ビジネススクール、日本能率協会にて、講師実績あり。
●ダイナミックヒューマンキャピタル
http://www.d-hc.com/
https://www.facebook.com/DynamicHumanCapital/
●中村文子ブログ
http://www.d-hc.com/blog

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。