「ここまでの5つのポイントを振り返り、自分自身にとって重要性が最も高いものを1つ選んでください。そして、なぜそれが重要性が高いのか、さらに、職場でどのように行動に移していくのかを、一人ひとりグループ内で共有しましょう」

 1つ選んで理由を説明するという指示ですので、グループ内で発言をしない人が出にくくなります。また、グループメンバーの中に研修内容について懐疑的な人がいたとしても、他のメンバーの説明や実践に向けてのイメージを聞いているうちに、納得できたり、自分の実践イメージがわいてくることも期待できます。

 その後、グループ内で話した内容を全体に共有する場合は、リーダーを決めてまとめて発表してもらうとよいでしょう(そのリーダーは固定せずに都度、交代で担当することをお勧めします)。 グループ内の共有ではネガティブな発言もあるかもしれませんが、グループリーダーは自分たちで共有した結果を適切にまとめ、講師や研修の趣旨に沿った内容を発表してくれるでしょう。

 このようにリーダーがグループを代表して発言する方法で運営していくと、個人が参加者全体の前で自由に発言する機会が少なくなるため、「そもそも……」などのネガティブな発言を減らすことができます。

反応がある、盛り上がることがよいわけではない

 問いかけに対して反応してくれる人や、発言が多い人がいることは、講師にとってやりやすいでしょう。ですが、反応や発言が多い、または盛り上がっているからといって、必ずしも参加者の学びが深まっているとは限りません。しかも、参加者が研修の内容を前向きに受け止めているというわけではないのです。

 なぜなら、新しいことを学ぶ際に、じっくりと時間をかけて考察したい人もいるからです。発言せずに深く考えたり、自分の中で、今後の実践についてのイメージを具体化したりしている人もいるでしょう。

 講師は先入観を持たずに、ニュートラルな姿勢や気持ちを保って、参加者の反応を見極めることが大切です。

 また、考えをまとめたり深めたりすることができるよう、個人で考察する時間を研修のデザインに組み込んでおくこともとても重要です。

本当に意義のある参画型の研修を行うために

 一方的な講義を行うだけであれば、集合研修は必要ないかもしれません。動画やEラーニングでも学べます。せっかくの研修を一方的な講義にしないために、参加者を巻き込む工夫を行うことに意義があります。しかし、参加者を巻き込む方法、問いかけや投げかけ方によっては、参加者の考えや理解が浅いまま終わってしまったり、不本意な方向に話が展開して不必要な時間を割くことにもなり、研修自体の効果に悪影響が出ます。

 冒頭に挙げた講師の対応が難しいケースは、一見、ネガティブだったりやる気がなかったりという参加者側の問題に見えるかもしれませんが、講師からの働きかけで変えていくことができます。集合研修だからこそ得られる学びと意義のある研修を行うには、講師は、研修のデザインやファシリテーションの質を上げることがとても大切なのです。講師はデザインやファシリテーションについて学び、そのスキルを向上させていきましょう!

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。人材開発について少しでもお役に立てていれば光栄です。世の中から「退屈でつまらない研修」がなくなるよう、今後も活動を続けてまいります。

中村 文子氏のセミナー
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「人材開発担当者養成講座」

中村 文子氏の書籍
研修デザインハンドブック
中村 文子、ボブ・パイク 著 / 日本能率協会マネジメントセンター / 3,024円
社内講師の方や、すでに研修講師をしている方、教員、研修を企画する立場の方にインストラクショナルデザインのノウハウをまとめた本。
講師・インストラクターハンドブック
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講師のスキルアップのためのノウハウをまとめた本。

中村 文子(なかむら・あやこ) ダイナミックヒューマンキャピタル株式会社 代表取締役
中村 文子

 大阪府出身、神戸市外国語大学 外国語学部 英米学科 卒業。マイクロソフト株式会社名古屋営業所 勤務を経て、P&Gジャパン、ヒルトン東京ベイにて人材育成・組織開発に従事。2005年より現職。2006年にASTDのカンファレンスで人材育成の世界的権威、ボブ・パイク氏のセッションに初参加、大きな衝撃を受ける。トレーナー認定のプロセスを経て、2007年秋、日本人初のトレーナーとして認定される。専門分野は、トレーナー養成、ホスピタリティ、管理職研修、ビジネスコミュニケーションスキル研修など。ホテル業界、製薬会社、電機メーカーなどの業界で、活動中。早稲田大学エクステンションセンター、日経ビジネススクール、日本能率協会にて、講師実績あり。
●ダイナミックヒューマンキャピタル
http://www.d-hc.com/
https://www.facebook.com/DynamicHumanCapital/
●中村文子ブログ
http://www.d-hc.com/blog

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。