中村文子
ダイナミックヒューマンキャピタル代表取締役

 先日、ある研修で質問を受けました。
「今日の研修とは直接関係ないのですが、今、新人の離職率が高いことが課題になっています。何かよい研修があれば、と思っているのですが……」
ということでした。離職率を下げるために新人に提供できる研修として、どのようなものが考えられるでしょうか。

・社会人であること、仕事に対する姿勢を考えるような研修。
・キャリアプランを描くことを支援するような研修。
・職場の人との人間関係を構築するためのコミュニケーションの取り方の研修。
・ストレス耐性を高めるための研修。

 あるいは、PDCAやホウレンソウ、問題解決など仕事の成果を高めるための研修で、より仕事のやりがいを感じてもらうというアプローチもどうだろう……と、いろいろと考えることは可能です。ですが、新人の離職率が高いという課題に対して、果たして、新人本人への研修で解決できるでしょうか。

 人は何かの課題を目の前にした時、自分が持っている枠で物事を見て、自分の持っているツールで解決しようとするものです。つまり、新入社員研修が自分の担当である場合、新入社員への研修でなんとか課題解決ができないかと考えがちなのです。ですが、真因を突き止めてそこへの対策を講じない限り、自分の責任範囲内でなんとかしようという発想での施策を打っても本質的な解決はできません。

 では、新入社員の離職率の真因としてどんなことが考えられるでしょうか?
・受け入れ側の上司や先輩の受け入れ態勢はどうか。
・育成計画はしっかり作られ、実行されているか。
・新入社員自身が、成長していると実感できる仕組みになっているか。
・企業文化や職種に合った人材が採用されているか。
・採用基準やプロセスに問題はないか。
・新入社員の目標となるような上司や先輩は存在するか。
などなど、検討すべき点は数多くあります。そして、今ここに挙げたような点はすべて新入社員本人の問題ではなく、受け入れ側の上司や組織の問題です。そのため、新入社員への研修を強化したところで、解決はしないでしょう。

 この連載で以前「第10回 研修が答えではないかもしれない」)にもご紹介しましたが、このように、ビジネス上の課題に対して、何でも研修で解決しようとするのではなく、組織開発、システムやインフラ、採用、人材配置、指導育成やコーチングなど、他の選択肢も含めて検討することが重要なのです。

・育成計画がしっかりとしていなければ、育成計画を作ってもらう。
・計画はよくても指導の仕方がよくないようであれば、OJTなど指導するためのスキルを習得してもらう。
・採用基準を見直す。
・採用面接のスキル向上をはかる。
・新入社員の最初の上司にはスーパースターをアサインする。