リップシャッツ 信元 夏代
アスパイア・インテリジェンス社 代表取締役

 ある在米日系グローバル企業で、アメリカ人部下が日本人上司に対してある提案を行ったところ、日本人上司は「That’s difficult(それは難しい)」と伝えました。さて、1週間後、何が起こったでしょうか。

却下なのか見込みありなのかが伝わらないコニュニケーション

 日本人なら、「それはちょっと難しいですね……」などと言われたら、「そうか、ダメなんだな」と理解して諦めたり引き下がったりすることでしょう。しかし日本に住んだこともなければ日系企業で働くことも初めてだったアメリカ人部下は、1週間後、自分の提案内容を大幅に改善すべく試行錯誤し、「難しいチャレンジもこれなら実現可能!」と、意気揚々と日本人上司にプレゼンをしました。

 しかし日本人上司は「ダメと言ったのに分からんやつだな……」と言わんばかりに眉をひそめ、「We’ll think about it(まあ考えよう)」と伝えました。部下は、自分の提案を再検討してくれる時期が一向に来ないことにだんだんイライラし、上司に対する不満を募らせていったのです。一方で上司は、却下したはずなのに部下がまだ諦めていない様子が見られ、部下の「理解不足」にやはりイライラし、次のパフォーマンス評価では低い評価をつけようと考えました。

 さて、この理解のギャップはどうして起こってしまったのでしょうか? 皆さんは、異文化の相手に対してプレゼンやコミュニケーションを行った時に、なぜか理解がズレてしまったがどこがどうズレたのか不可解……という経験はありませんか?

「言葉の文化」と「察しの文化」の違い

 異文化の人々と意思疎通を図ることはそう簡単ではありません。「同じ人間なんだから根っこは一緒」と思うかもしれませんが、グローバルビジネスに携わっていると、意外と根っこから違うのだな、と思わされることも少なくありません。文化の違いは、価値観の違い、コミュニケーションや考え方の違いなどに大きく影響します。

 文化には色々な定義がありますが、「あるグループに続する人々が暗黙のうちに共有したり習得している考え方、感じ方、価値観などのこと」である、といえるでしょう。文化は、氷山にたとえられます。つまり、見えている部分(発せられた言葉や目に見える表情、しぐさ、行動など)はほんの一部で、そのほとんどは水面下(隠れている価値観や暗黙の了解など)に隠れているのです。