実は『吾輩は猫である』も『雪国』も、冒頭3文を声に出して読んでみると、およそ7秒前後となっているのです。書き物もスピーチも、冒頭のつかみが非常に大切です。

人は、頭の中でも息継ぎする

 読み物では、読んでいて疲れる文章と、どんどん読み進めてしまう文章がありますよね? 何が違うのでしょう?

 それは、人は、頭の中でも息継ぎする、ということと関係しています。

 難解かつ長い文章を読んでいると想像してみてください。きっとすぐに頭の中が窒息しそうになるはずです。長い文章を見た瞬間に、「長い=読むのがおっくう」というイメージも与えてしまうことでしょう。文章を読む時、頭の中に情報がラクにスッと入ってくるには、頭の中でも息継ぎの「間」を与えてあげることが必要なのです。

 スピーチの場合は声に出しているのですからなおさら「息継ぎ」が重要です。「立て板に水のように話す」という表現もありますが、実はこういう話し方はスピーチには向いていません。話している本人も、そして聞いている相手も、息継ぎする「間」がないとどうなるでしょう? どこにフォーカスしてよいのか、どれが重要な情報なのか判別できず、すべての情報が頭の中を素通りしてしまうのです。

 これを防ぐためには、書く場合でもスピーチの場合でも、一文をできるだけ短くするというテクニックを覚えておくとよいでしょう。

 もちろん、短すぎて意味が伝わらないのでは意味がありません。自分なりに意味は伝わる・読み心地のよい文章、話しやすい文章の長さを工夫してみましょう。

トリセツほど分かりにくい。情報はえこひいきして

 あなたは、新しい商品を買った時に付いてくる取扱説明書を、隅から隅まで読みますか?

 私はだいたいの場合、「クイックスタート」の部分だけざっと読んで商品に触り、分からないところがあったらその箇所だけを読みます。皆さんも似たようなパターンではないでしょうか?

 取扱説明書には、商品の特徴や機能、各機能の詳細説明からトラブル時の対処方法、保証に至るまで、その商品に関する「すべて」の情報が記載されています。が、それゆえに、「取扱説明書を隅から隅まで読みたい!」と思う人はいないわけです。つまり、読み手にとっては、「すべての情報」は必要なく、「自分が知りたい情報」だけが必要なのです。

 あなたのビジネスプレゼンは、盛りすぎのトリセツになってませんか?

 「あれも言いたい、これも言いたい、だってわが社の商品はこんなに素晴らしいのだから!」と思ってしまうあなた。要注意です!

 人はトリセツを自分に必要な箇所だけ読むように、ビジネスプレゼンでも、聞き手は、「自分にとって、わが社にとってのベネフィットは何か?」という視点で聞いています。ですから、「聞き手視点」に立って情報を絞りこむことで、初めて聞き手は「聞こう」と思ってくれるのです。「情報のえこひいき」が必要なのです。