話すように書く

 読む文章の書き方と、スピーチ原稿の文章の書き方で、若干異なる点があります。

 それは文調です。

 読みやすい小説というのは、話し言葉のような文調になっています。自分が普段会話しているような調子で文章が書き進められていると、とても読みやすく、いつまででも読んでいられるのです。しかしビジネス関連の読み物、ビジネス文書や記事、ビジネス本などでは多くの場合、話し言葉で書かれているものはほとんどないでしょう。分かりやすい文章ながらも、主語から動詞まで、きちんとしたフルセンテンスで、時にはフォーマルな文調で書かれているはずです。

 スピーチの原稿を作成する場合に非常に気を配らなければならないのは、この点です。

 紙に落とした原稿の文章を読み返した時点ではごく自然で分かりやすいかもしれませんが、これを、声に出して、耳からのみ入る言葉、として語った場合、硬すぎたり違和感があったりするケースが多いのです。そうすると、「書いた原稿を覚えてきました」感が満載のスピーチになってしまい、そのようなスタイルでは、聞き手の心をつかむことは当然できません。

 例えば、今読んでいただいているこのコラムの冒頭を例にとってみましょう。このような書き出しでした:

 先日私は、とあるベテランライターの方の講演会に参加してきました。その方はなんと、一時期流行った、「アッシーくん」という表現の生みの親!少女小説からファッショントレンド記事、ビジネスコンテンツまで、文体を自在に変化させて幅広いジャンルにおいての執筆をなさっている、文才あふれるすご腕ライターです。

 恐らく読んでいるだけなら違和感はないと思いますが、これを、スピーチ原稿のつもりで声に出して読んでみてください。比較的会話調を意識して書いてはいるものの、誰かと話をする時、このような話し方をするでしょうか? もっとこんな感じではありませんか?

 この間、あるベテランライターの方の講演会に参加してきたんですが、日本で「アッシーくん」っていう表現が流行ったの、覚えてますか? この方は、「アッシーくん」の生みの親なんですよ。とにかく文才にあふれていて、何よりすごいのは、文体を自在に変化させられるところなんです。だから、少女小説からファッショントレンド記事、ビジネスコンテンツ、とにかく幅広いジャンルで執筆なさっていて、すご腕のライターさんなんです!

 当然、フォーマルなビジネスプレゼンの場では、もう少し硬い文調になるかとは思います。が、日常のプレゼンの場合などは、思い切って「話し言葉」を意識して原稿を作ってみてください。そしてプレゼンをする前に、必ず、相手を想定しながら、その人に話しかけるかのように声に出してみてください。自分はこんな話し方じゃないな、と感じたら、自分らしい自然な会話調に書き換えてみましょう。

リップシャッツ 信元 夏代(りっぷしゃっつ・のぶもと・なつよ)

アスパイア・インテリジェンス社 代表取締役
ブレイクスルー・スピーキング代表

リップシャッツ 信元 夏代  早稲田大学商学部卒。ゼミ専攻は「異文化コミュニケーションとビジネス」。NYUにてMBA取得。1995年に渡 米後、伊藤忠インターナショナルにて鉄鋼、紙パルプ業界の営業・事業開発に携わる。その後マッキンゼーに て消費財マーケティング・事業プロセス改革などの業務に携わった後、2004年に、事業戦略コンサルティング 会社のアスパイア・インテリジェンス社を設立。
 TEDxTalk スピーカー。2013年、2014年春季トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテス トでは、日本人初の地区大会優勝2連覇を果たしている。この経験を受け、2014年9月にブレイクスルー・スピ ーキングを設立。グローバルに活躍したい日本人のためのグローバルパブリックスピーキングのE-learningプ ログラムを中心に、個人コーチングセッション、企業内研修等も行う。
BREAKTHROUGH Speaking: http://www.btspeaking.com

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。