パブリックスピーキングは習得しうる “スキル”

 海外で通用するパブリックスピーキング、というと、英語を勉強しなければ!と考える人が多いものです。しかし、ノンネイティブである私たちにとって、ネイティブと対等に話せる英語力を養うのは至難の業。一方でパブリックスピーキングは、習得しうる“スキル”です。

 パブリックスピーキングの極意は、聞いている相手がたった一人の営業相手でも、何百人の聴衆でも、彼らの心を捉えて放さず、心を大きく動かす、ということです。実はそこに言語力はあまり必要ではありません。どの言語を使う場合でも、パブリックスピーキングのスキルの上達にフォーカスすることで、今あなたが持っている言語力のままで、異文化の人相手でも、格段に伝わりやすいスピーチを実現することができるのです。それこそが、グローバル・パブリックスピーキングです。

 本コラムでは、グローバル・パブリックスピーキングのコツをご紹介していきます。

 筆者がプロフェッショナル会員として所属している、全米プロスピーカー協会にて、先日、ワークショップが行われました。

 講師は共に役者出身で、15年以上にわたりプロスピーカーとして活躍し、現在では1回の出演料が400万円前後にもなるエイミー&マイケル・ポート夫妻です。役者出身のスピーカーの特徴は、なんといってもデリバリー力が高いことでしょう。筆者もコーチを活用しています。原稿のアイデアから作成、校正などの構成面のアドバイスは、ビジネス出身のプロスピーカーであるスピーチコーチに頼りますが、リハーサル段階でデリバリー面のアドバイスを受けるのは、役者出身のアクティングコーチにと、役割を分けています。

 エイミー&マイケルのワークショップでは、役者出身スピーカーならではの視点から、デリバリー完成度を徹底的に高めるための、「リハーサル7つのステップ」について学びました。これを皆さんにも共有したいと思います。

ステップ1:台本読み

 演劇などのお芝居では必ず、立ち稽古に入る前に、それぞれの役者がテーブルに座って台本を声に出して読む「読み合わせ」という稽古から始めます。

 スピーチも同様。原稿が固まったら、黙読するのではなく、声に出して読んでみること。そうすると、よい表現だと思った単語でも、声に出すと言いづらい、しっくりこない、自分らしく聞こえない、イマイチ感情がこもらない、など、黙読しただけでは分からない感覚と気づきが得られます。スピーチ原稿は読書のためにあるものではありませんから、必ず声に出して確認しながら、しっくりくる言い回しに書き換えていきましょう。

ステップ2:コンテンツ・マッピング

 次に、原稿をどういうふうに読んでいきたいか、原稿に直接、しるしやト書きを書き込んでいきます。

 書き込むのは主に2点。1点目はビート、つまり、間合いやテンポのことです。どこでしっかり間を取るのか。聞き手がしっかりとスピーチ内容を消化していくためには、「考えるための間」を与えることが必要です。そして、どこでテンポを速めたり遅らせたりするのか。緩急がしっかりしていると、全体としてメリハリが出てきます。間を取るところでは斜め線、テンポを遅らせる時は下線、速める時は波線、など、分かりやすいしるしを付けていきます。

 2点目は、Operative Word、つまり、重要な単語に○を付けていきます。例えば、「I didn’t know she was guilty.」という文章があったとしましょう。

 「私は彼女が有罪だと知らなかった」、という意味ですが、ここで、「I」をしっかり強調して言ったならば、「(私の友人は知ってたかもしれないが、)“私は”知らなかった」、という意味に聞こえます。一方で、「She」を強調したならば、「(私は誰かが有罪だと知っていたが、)それが彼女だとは知らなかった」という意味合いに聞こえてきます。

 つまり、伝えたいことは何なのか、をしっかり考え、伝えたいことを伝えたいとおりに伝えるためには、どの単語を強調すべきなのか、しるしを付けておくわけです。すべて平たんな読み方をしてしまったら、聞き手に本来の意図が伝わりません。

ステップ3:ブロッキング&ステージング

 立ち稽古初期段階の「場当たり」と考えるとよいでしょう。

 何をどこで言うのか。体をどのように動かすのか。ステージ上では、物理的な動きはすべて、何かを伝えてしまいます。そのため、癖や緊張から、不必要な動きをしてしまうことが多々あります。それを徹底的にそぎ落とし、意味のある動きだけを意味のある箇所で行うことができるよう、舞台を、場面や意味合い、登場人物によって切り分けて、舞台の床に目に見えないマーキングを付けていくイメージをしながら動きを設計していきます。