ステップ4:即興&書き直し

 リハーサルをしていくなかで、とっさに出てきた表現が、実はとても気に入った! ということもあるでしょう。そんな場合、どんどんそれを取り入れていきましょう。ただし、思いつくたびにリハーサルを止めて書き留めていては、全体の流れも止まってしまいます。そこでリハーサル中も必ず、録画または録音をして、後でレビューすることができるようにしておきます。

ステップ5:招待者オンリー・リハーサル

 ほぼ8割方準備ができたかな、という段階で、ある特定の人たちだけを招待して、その人たちの前でリハーサルをし、フィードバックをもらいます。「ある特定の人たち」とは、コーチや上司や同僚、「自分の指示に従うことができる人」です。この時点では10人以下で十分です。 「指示に従うことができる人」とはどういうことか?

 フィードバックをもらう際、ただ何も伝えずに、「感じたことをフィードバックしてください」と伝えるより、「私の動作の癖を見つけていただきたい。不必要な動きをしたところには、この原稿に印を付けていってください」、「あー、とか、えー、とか、不必要な言葉をチェックしていただきたい。そんな不必要な言葉を発していた時、どこで何を言っていたのか、書き留めていってください」など、具体的なチェックポイントを依頼し、その「指示に従って」フィードバックをしてもらうことで、自分にとって必要な課題にフォーカスすることができるのです。

 あなたのためと思って、好き勝手なフィードバックを丁寧にしてくださる方もいるかもしれませんが、それではかなり主観的なフィードバックになります。それだけでなく、一つひとつ、課題をクリアしていきたい段階であるのに、ある特定のフォーカスしようとしている課題からそれてしまうため、効果的ではありません。ですから、「指示に従うことができる人」に依頼することです。マーケティングでいうならば、フォーカスグループインタビューのようなイメージでしょうか。

ステップ6:オープン・リハーサル

 招待者オンリーのリハーサルを行ったら、次は、不特定の人たち数十人(しかし実際のスピーチを行う場面よりもはるかに少ない人数)に集まってもらい、もう少し大きな規模でリハーサルをします。

 この段階では、具体的なフィードバックを求めるのではなく、より多くの人たちを前にしてスピーチを行った時に、どこでどんな反応が来るのか、予想・期待していた反応と違う部分はあるか、そして予想とは違ったが取り入れられる部分、または訂正すべき部分はどこか、テストしてみます。こちらもマーケティングでいうならば、新商品を全国展開する直前の、限定市場トライアルのようなものです。

 もしかすると大幅な書き直しが必要になるかもしれません。そうだとしたら、ラッキーなことです。ぶっつけ本番で失敗するよりも、本番に向けて精度を高められるわけですから!

ステップ7:ドレス&スティック

 最後に、本番のスピーチの場面で着る洋服、靴、そしてポインターやクリッカーなどを使いながら、全体を通してみます。いわゆるドレスリハーサルです。

 特に女性の場合には重要なプロセスで、人前で美しく見せたいために、普段履きなれない高いヒールを履こうとしていた場合、ヒールの安定感を確認しておくべきです。また、ワンピースドレスなどの場合、デザインはすてきだけれども、マイクを付けるよい位置が見つからないことがあるかもしれません。男性でも、新品の革靴を履いていたら、靴底がツルツルしすぎて舞台で転びそうになる、なんていうこともあるかもしれません。

 また、クリッカーも、使い慣れていないと、次のスライドに進むのにどのボタンを押していいのか、手元を確認したりしなければなりません。これは不必要な動きとなり、聞き手の気をそらしてしまい、メッセージの邪魔になります。自動的に、ボタンを押すタイミングで、押すべきボタンを親指が勝手に押している、という状態になるくらい、体とクリッカーを一体化させておきましょう。

 こんなことで失敗するケースはめったにないだろう、と思ったあなた! 実際に、洋服・靴などがボトルネックになるケースは意外と多いものなのです! クリッカーのボタンの位置を確認しているスピーカーも頻繁に見かけます。用意周到にテストしておくことは、プロフェッショナルとしてとても重要なことです。

 リハーサルごときでこんなにたくさんのステップを踏まなければいけないのか? とお思いかもしれませんね。でもこれをしっかり実行するか、省略するかでは、プロとアマチュアの質の歴然たる差として聞き手がはっきりと感じてしまうのです。

リップシャッツ 信元 夏代(りっぷしゃっつ・のぶもと・なつよ)

アスパイア・インテリジェンス社 代表取締役
ブレイクスルー・スピーキング代表

リップシャッツ 信元 夏代  早稲田大学商学部卒。ゼミ専攻は「異文化コミュニケーションとビジネス」。NYUにてMBA取得。1995年に渡 米後、伊藤忠インターナショナルにて鉄鋼、紙パルプ業界の営業・事業開発に携わる。その後マッキンゼーに て消費財マーケティング・事業プロセス改革などの業務に携わった後、2004年に、事業戦略コンサルティング 会社のアスパイア・インテリジェンス社を設立。
 TEDxTalk スピーカー。2013年、2014年春季トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテス トでは、日本人初の地区大会優勝2連覇を果たしている。この経験を受け、2014年9月にブレイクスルー・スピ ーキングを設立。グローバルに活躍したい日本人のためのグローバルパブリックスピーキングのE-learningプ ログラムを中心に、個人コーチングセッション、企業内研修等も行う。
BREAKTHROUGH Speaking: http://www.btspeaking.com

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。