リップシャッツ 信元 夏代
アスパイア・インテリジェンス社 代表取締役

 皆さんが普段スピーチをする際、どんな視点で話をしているでしょうか? 自分・自社の視点から、聞き手のためになる成功事例や秘訣を共有する。このような視点で話すことは多々あると思います。営業トークの時などは特にそうでしょう。しかしそれを聞いた聴衆の頭には、おそらく次のいずれかが思い浮かぶことでしょう。
「この人は自信満々な人だな……」
「この人は特別な人だから成功したんだな……」

 スピーカーとして人前に立って何かを話す、ということは、特別な何かを持っていたり経験していたりしないといけないもの、というステレオタイプを持っていませんか? それは大きな間違いです。スピーカーとして、聞き手に「この人は特別だ。すごい」と思わせることは、実は好ましいことではありません。それは、スピーカーが特別な存在に見えてしまうと、聞き手は「あの人は特別だからそんなことができるのであって、自分は普通の人間だから無理」と感じてしまい、どんどん距離が離れ、スピーカーのメッセージに聞き手が価値を見いだせなくなってしまうからです。

 常に聞き手の視点に立ち、「私もあなた方と同じような普通の人間です。こんな苦労や失敗をしたんです」と距離感を埋めることで、初めて聞き手はあなたのメッセージに耳を傾け、価値を見いだすことができるのです。しかし、ついつい気づかぬうちに「自分視点」のメッセージになってしまいがちです。

 そんな落とし穴を防ぐために、次の3つの「聞き手とつながるツール」をご紹介します。

聞き手とつながるツール その1:プロセスを強調する

 営業などの際には、もちろん自社や自社商品の優れた点をアピールしなければなりません。ミーティングなどでも、自分の意見がいかに優れているかを主張する必要があります。ここで大切なのは、強調すべきは「人(または会社)」ではなく、「プロセス」であるということです。つまり、自分の成功や優れた点を自慢するのではなく、そこに至った「旅路」の中で得た、成功の「プロセス」(商品ならば、フォーミュラ、レシピなど)を強調するのです。すると聴衆は、その「プロセス」に興味を惹かれ、それを学んでみたい、と思うようになります。

 しかし、これだけではまだ不十分です。この段階では、その「プロセス」に興味を持ったものの、どのような内容なのか、自分にとってどんな効果があるのか分からないからです。そこで、ツール その2をご紹介します。

聞き手とつながるツール その2:定量的に数字を示す

 プロセスを定量化することです。ステップ分けする、といってもよいでしょうか。例えば、「自己実現をするため、アリストテレスからトニー・ロビンズまで、昔も今も変わらず共通して使われているフォーミュラがあります。4ステップ・フォーミュラです」「私がこの体験から学んだことは、変革を、自分にとってマイナスではなくプラスに活用するためには4つのRを実践する、ということです」といった具合です。

 このように、プロセスが定量化されると、単にプロセスを並べ立てられるよりも、急に具体性が増し、実現度が高まるような気になるものです。さらに、聴衆の興味の持続にもつながります。それは、プロセス自体に興味を持ったら、プロセス1だけではなく、最後の4まで聞きたい、と思うからです。