東京建物の「Brillia向ヶ丘遊園」では、IoTインターホンとスマートフォンを連携させ来客応対やロビーエントランスの遠隔解錠を可能にし、各住戸にトランクルームを設置することで、宅配便の再配達の削減を図る。また、家族やマンション居住者の安否が共有できるWEBサービスをインターホンと連携させ、災害時の自助と共助に役立てる。WEBサービスやIoTインターホンを利用して繰り返し安否確認訓練を行うことで、防災を切り口にしたコミュニティ形成に役立てようとするものだ。インターホンはパナソニックの「Windea」を採用。

外出先でも来客対応、宅配便受け取り対応も

 新宿駅から小田急線急行で約20分。向ヶ丘遊園駅から徒歩5分の場所に「Brillia向ヶ丘遊園」は誕生する。鉄筋コンクリート造5階建て、82戸。2018年末に完成・入居を予定している。

Brillia向ヶ丘遊園のイメージパース
生田緑地の北東部に近接する立地。緑が豊富で住環境に恵まれたエリアであるものの、周囲は土砂災害警戒区域に指定されており、崖くずれの危険性が危惧される地域である。建築計画による対策のみならず、居住者同士の繋がりを防災に生かせないかと考えた(資料:東京建物)
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 開発者である東京建物がこの分譲マンションで提案するのは、インターホンIoTシステムだ。東京建物・住宅事業部事業推進グループの我山洋光氏は「東京都心から近いにも関わらず自然豊かな地域でのプロジェクトであり、若いファミリー世帯を主要な居住者として企画した。こうした世帯の暮らしを支えるためにIoTインターホンの導入を提案した」と話す。インターホンとスマートフォンを連携させることで、物流効率化への貢献を図る。

 このマンションでは、専用アプリにより住戸のインターホンと居住者のスマートフォンを連携するシステムが構築されており、居住者が外出時でも、マンションのロビーエントランスからの来訪者の呼び出しをスマートフォンで応対が出来る。

 通常のインターホンと同様に来訪者の映像を見ながらスマートフォンで応対が可能なため、安心なシステムだ。

IoTインターホン機能の全体図
外出先のスマートフォンでロビーエントランスの解錠を可能に(資料:東京建物)

 マンション1階のエントランス横の共用部には宅配ボックスを備え、宅配業者は居住者が外出中でも配達を完了することができる。これによって、宅配業者の再配達を防ぐことができそうだ。しかし、ネット通販利用の拡大から「共用部の宅配ボックスはすぐに一杯になってしまうと、既往のマンション居住者から声が寄せられていた」(我山氏)という。

 こうした状況に対応するため、本プロジェクトではさらに一歩踏み込んだ仕組みを取り入れた。

 マンションのエントランスから各住戸の玄関までには、オートロックによる2つのセキュリティがある。第1のセキュリティは、呼び出しインターホンを備えたロビーエントランスだ。第2セキュリティはロビーの先にあり、通常、居住者だけがICキーを使って通過することができる。本提案では、スマートフォンによる応対で居住者に許可を得た場合、宅配業者が第2セキュリティを抜けて、各住戸の玄関横のトランクルームまで配達できるようにする。

 具体的な手順は次のようなものだ。

 まず、宅配業者はロビーエントランスのインターホンから居住者を呼び出す。外出中の居住者はスマートフォンで第1セキュリティを解錠する。共用部の先にある、第2セキュリティを抜けるためには、オートドアを開けるためのICキーが必要だが、大手宅配会社数社と契約を締結した上で、これを貸与する。このICキーを用いることで、地域担当の宅配業者は、第2セキュリティを解錠する。このとき出入りの記録が保存される。

 ICキーを契約によって貸与する仕組みは、過去のマンションでは新聞配達を行う専売店との間で行われてきたもので、今回は宅配会社に適用するようアレンジしたのだという。

 第2セキュリティを抜けた宅配業者は、玄関横のトランクルームを、ICキーを用いて解錠する。このICキーは、FeliCaシステムによるもので、利便性に加え安全性にも考慮して採用を決めた。

IoTインターホンとの連携による物流効率化の解説イラスト
居住者と宅配会社、管理組合3者間の契約を前提に成り立っている(資料:東京建物)

利便性の追求とセキュリティ確保のバランスを

 技術的には実現化へのハードルは高くないように思われるが、我山氏らを悩ませたのが「セキュリティ」についての考え方だ。

 「一般的にマンションはロビーエントランスで訪問者を確認し、不特定多数の人が出入りできない仕組みになっている。セキュリティ上の安心はメリットでもある一方、宅配の受け取りには不便であるのでは。利便性の追求とセキュリティのさじ加減について議論を交わしてきた」(我山氏)。

 別の側面では、スマートフォンによるロビーエントランスの解錠に対し、グループの管理会社から慎重な意見が寄せられた。「誤作動をはじめ、実際の居住者の意図しない場面で解錠される恐れがある」というのだ。我山氏らはこうした意見をひとつずつ検証。重大なセキュリティリスクは回避しつつ、居住者の利便性向上への落としどころを探った。

 我山氏は「技術的には、第2セキュリティやトランクルームを遠隔操作することは可能だ。しかし、遠隔でのオートロック解錠は初めての試みであり、リスクも完全には払拭できない。検討を重ねた結果、ICキーの貸与によりセキュリティ内に入る事ができる人を限定することなどで、現在の仕組みに落ち着いた」と説明する。

居住者間の安否確認でコミュニティ意識向上に

 IoTインターホンは、外出での来訪者対応、宅配便受け取りの機能だけに留まらない。緊急地震速報や管理者からの災害情報を居住者に伝えることにも役立てる。災害発生時には、予め登録して頂いた居住者のメールアドレスに安否登録を促す通知が送られる。外出中に災害情報を受信した場合は、WEBブラウザを介して、自身の安否登録や家族の安否確認を行うことが可能だ。在宅中はインターホンのモニターを用いて、安否登録や家族の安否確認を行うことができる。スマートフォン等を所持していない子供や操作が苦手な高齢者の方も、自身の安否を家族に報告できることが可能になった。家族間だけでなく、マンション居住者間での情報共有・安否共有も可能としており、災害に際しての共助に役立てることも期待される。

 マンションへの居住者の入居後には、このシステムを利用して居住者による安否確認訓練を定期的に実施することを予定している。継続的に行われる訓練により、家族間や居住者間における共助の意識向上を促すという。

災害対策サービスの全体像
コアシステムには、テンフィートライト社の「ゆいぽた」を利用。分りやすいUIで、家族間およびマンション居住者間の情報伝達が可能(資料:東京建物)
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マンション事業への標準提案に

 東京建物が、本事業で検証するのは、次の3テーマだ。

  1. 1カ月単位でのスマートフォンとの会話成立数と、ロビーエントランス解錠数より、再配達の軽減率を算出
  2. インターホンシステムを用いた訓練時の安否登録率の推移の確認
  3. インターホンとスマートフォンそれぞれの安否登録率の分析

 物流効率化の支援と防災を核にしたコミュニティ形成、両面の実証に期待がかかる。

 インターホンとスマートフォンの連携や、遠隔解錠の仕組みなど、個々の技術や設備はとくべつ目新しいものではない。我山氏は「他社も含めこれまでで導入の事例はあった。ただし、ICキーでのセキュリティ記録や宅配会社との契約取りまとめなども含め、総合的にパッケージした提案は、はじめての試みではないか。検証を踏まえて、マンション事業への標準的な提案にできれば」と意欲を覗かせる。