ZEH推進協議会が提案するのは同協議会IoT委員会に所属する全国の地域ビルダー23社とパナソニックを中核とする電機・住設メーカーなどによって、地域性に配慮しつつ、IoT技術を組み込んだ次世代住宅の普及・波及を目指すプロジェクトだ。IoT技術の導入によって「防犯対策の充実」「家事負担の軽減と時間短縮」「物流効率化への貢献」を効果として見込む。

協議会が核になって地域ビルダーのIoT住宅の取り組みを後押し

 ZEH推進協議会は、2017年6月に設立され、約150社の全国の地域ビルダーが会員として加盟している。国が2014年に閣議決定したエネルギー基本計画で、今後は新築住宅についてZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)化を求めている。同協議会は、名前が示す通り、これに先駆け的に取り組み、推進していこうという全国のビルダーを主体とした組織だ。

 同協議会理事長の小山貴史氏は「ZEHに先駆的に取り組むビルダーは先進的な技術についての関心も高い。1社だけでは難しいところを、協議会が核となって取り組む体制を整えることで、電機・住設メーカーの協力を得やすく、IoT技術のサービス内容や施工面の課題など会員同士で情報交換ができる」と、提案に至った背景を説明する。

 IoT機器については、パナソニックの「IoT操作モニター」を導入し、ECHONET Lite(エコーネットライト)によって接続可能な家電機器を基本とする。また、カメラ付きドアホンや宅配ボックスについては「外でもドアホン」で制御する。これらのシステムが、ハブを介してインターネット上のパナソニックのHEMSデータサーバーと接続されている。外出先のスマホからは、このサーバーへアクセスすることで、家庭内の機器の操作などが可能となる。

本提案プロジェクトの体系図
ZEH推進協議会のIoT委員会に参加する23社が中心となり、パナソニックなどと連携してIoT技術の導入や利用サポート、データ収集などを行う(資料:ZEH推進協議会)
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 採用を予定しているIoT機器は以下のようなものだ。

 まず、防犯対策については、カメラ付きドアホンをインターネットと接続し、外出先からも家族の帰宅を確認でき、子どもの見守りや高齢者などの見守りにもなり、安全と安心を確保する。

 物流効率化については、インターネットを活用したカメラ付きドアホンと近接して宅配ボックスを設置することで、宅内だけでなく、外出先からも宅配事業者の顔を確認しながらの対応が可能になる。このことでセキュリティーを確保したうえで不在時再配達の削減を可能にする。

 それから、家事負担の軽減については、宅内IoT操作モニターやスマートフォンによる住宅設備(エアコン、照明、給湯機、電動窓シャッター・ブラインド、ドアホン)の遠隔操作やライフスタイルに合わせて、時間設定、一括電源オフ、電気の使いすぎのお知らせや使用状況で子どもの見守りに役立てるという。

 こうしたIoT機器の導入以外にも、住宅の性能については同協議会の目指す、高断熱や省エネ住宅としての高い基準を満たすとともに、ユニバーサルデザインにも配慮する

IoT機器については、HEMSに基づく家電機器・住宅設備と、ドアホンや宅配ボックスを制御する「外でもドアホン」の2つの通信系統を統合し、ネットを介してパナソニックのサーバーとつなぎ制御する(資料:ZEH推進協議会)
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利用状況とアンケートによって効果や課題を検証

 本事業において実証しようとする内容は、以下のようなものだ。

  1. 子どもや高齢者だけで留守番した歳の防犯対策の充実
  2. 宅配ボックスを設置することで再配達の削減と家事負担の軽減
  3. 外出時や帰宅時の一括操作(照明・空調・家電など)
  4. 外出先からの設備機器操作(空調のオンオフ、お湯張り、施錠状態の確認など)
  5. ライフスタイルに合わせたタイマー設定による機器操作の自動化(電動ブラインドなど)
  6. 子どもや高齢者の見守り(ワイヤレスカメラ、電気使用量による帰宅確認など)

これらについては、機器の使用・通信についてログを取り、どれだけ利用されたかを把握する。

 さらに実証に当たっては、居住者およびビルダーに対してアンケート調査も実施する予定だという。

 居住者に対するアンケートでは、「使用方法の修得度」「メーカーやビルダーなどからの使用方法の説明の有無やその質」「導入したIoT機器の操作の頻度」「IoT機器を導入して良かったこと」「機器がネットに接続されることについての不安」などについてだ。

 一方、ビルダーについては、「IoT住宅の営業・設計・工事について、一般住宅と比べた困難な点」「IoT住宅普及に当たって顧客との商談での課題」「居住者に対するIoT機器の説明者や課題」「IoT機器への個人情報の設定やパスワード管理などの支援についての社内ルールや課題」などについて聞くという。

将来はIoTと高度エネルギーマネジメント連携も視野に

 小山氏が代表をつとめるエコワークス(福岡市)では、先行して2018年3月に福岡県春日市に次世代住宅モデルハウスを建設・オープンした。これは、住宅の省エネ性能面では、ZEH+(*1)、LCCM住宅☆☆☆☆☆(*2)を達成したもので、これに加えて、本提案のパナソニックのIoT機器を付加した住宅とした。今後は、同協議会の会員向けの見学会を開催していく予定だ。

注*1: ZEHを満たした上で更なる省エネルギーを実現、自家消費を意識した再生可能エネルギーを促進する住宅のこと(2018年度には、経済産業省と環境省が支援事業の対象とする予定だ)
注*2:住宅の長い寿命のなかで、建設時、運用時、廃棄時において、できるだけ省CO2に取り組むとともに、太陽光発電などの創エネで、住宅建設時のCO2排出量も含め、生涯でのCO2収支をマイナスにする住宅のこと。LCCM住宅☆☆☆☆☆(緑星5つ)は、CO2の排出率0%以下を達成するもの

2018年3月、福岡県春日市に建設・オープンしたLCCM+IoTモデルハウス「棲香SUMIKA」
小山氏が代表をつとめるエコワークスが本事業のモデルハウスとして建設し体験宿泊も可能だ。6月より見学会を予定している(写真:エコワークス)

 実際にIoT住宅に取り組みはじめたことで分かってきたことがあるという。「設計を担当する建築士は、お客様が希望するメーカーごとの家電の細かな機能などについて対応可能なのかなどの知見も必要になる。また、情報セキュリティー面でのお客様への説明責任や契約書のあり方についても、従来の個人情報保護の観点からの契約書のあり方を越えて検討の必要性を感じている」と小山氏は打ち明ける。

 本事業によって、全国のビルダーがIoT住宅をチャレンジすることで、そのメリットについての実証とともに、導入に当たっての課題が明らかにされることが期待される。

 そして、HEMSに代表されるように、IoT住宅と、住宅のエネルギーマネジメントの親和性は高い。「ZEH推進協議会としては、IoTを活用しゆくゆくは高度エネルギーマネジメントとの連携も視野に入れ、協議会加盟のビルダーへの普及・波及につなげていきたい」と小山氏は話す。

プロジェクトの未来像
「IoTと高度エネルギーマネジメントの連携」の姿(資料:一般社団法人エコーネットコンソーシアム)
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