LIXILが提案するIoTホームリンク「ライフアシスト」は、セキュリティーシステムとHEMSを連携することで、1つのアプリで様々な建材や設備などを操作できるようにする。さらに、ある動作をきっかけに一括操作が可能な「アシストルール機能」を搭載することが特徴だ。また、製品については、ペアリング設定を行った上で出荷することで知識や経験の乏しい工務店でも簡単に設置可能だ。提案では、LIXILが展開する工法を採用する全国工務店を軸に、本システムを導入し実証を行うという。
センサーと家電機器を一括コントロール
現在、IoTホームシステムは2種類の通信系統によって動作するもので構成されている。ひとつはECHONET Lite(エコーネットライト)によって、家庭内の電気設備を繋ぎ、エネルギーの見える化や家電機器の遠隔操作を可能にするHEMSだ。これは東日本大震災の電力不足を背景に規格が整備され、2013年頃から普及促進が進められてきた。もうひとつは、ZigBee(ジグビー)通信を始めとしたセンサー系のシステムだ。本提案では、玄関のカギや屋内カメラ、電動シャッターなどの見守り機能のシステムが、センサー系のシステムの感知状態に則って制御されている。
LIXILが本事業で提案するIoTシステムは、HEMS(ホームコントローラー)、センサー系の制御(リンクコントローラー)の2つを連携させたことに特長がある。
この2つを連携させたことで、例えば、帰宅時に玄関ドアを解錠すると、それをセンサーが感知。照明やエアコンのスイッチが自動的に入る。窓のシャッターも自動的に開く、といったホームオートメーションが実現できるのだという。

システム上では、各種センサー類が感知した情報をリンクコントローラーが取得。専用ルーターを中継して、クラウドサーバーに情報が送信される。サーバー上では、あらかじめ設定したプログラムに基づいて取得情報を処理、照明やエアコンなどをコントロールする情報を返す。戻ってきた信号は専用ルーターから、役割ごとにホームコントローラーとリンクコントローラーに振り分けられ、各種機器をコントロールする流れだ。
外出先から、スマートフォンやタブレットを用いてコントロールする場合は、専用アプリから指示する。指示情報はクラウドサーバーで処理された後、自宅宛てにコントロール情報を送信する。
本事業の開発を行ったLIXIL ZEH推進事業部 ZEH推進商品開発部の小平宏氏と山本徹氏は、「これらIoT技術によるホームオートメーションの実現が、防犯対策の充実や、家事負担の軽減、時間短縮など、住まい手のライフサポートに寄与できるものと考えている」と説明する。
アシストルール機能で、自由にカスタマイズ
各種センサーやカメラと家電機器を連携する仕組みは、住まい手の要望に応じて自由にカスタマイズを可能にする。これを同システムでは「アシストルール機能」と呼ぶ。
アシストルール機能は、「Trigger(きっかけ)」と「Action(動作)」の組み合わせで構成される。Triggerとされるのは、各種センサー類やカメラなどからの情報。一方、Actionの対象となるのが家電機器や住宅設備だ。センサー類がTriger情報を感知・取得した場合、その情報によって、家電機器・住宅設備が定められたルールでActionする。
Triggerとしては、スマートスピーカーによる音声操作も可能だ。

例えば、両親が外出中にドアが解錠され開かれた場合、センサーがそれを感知し、自動的にカメラが起動。帰宅した子供の姿を録画して、動画をメールに添付して両親の元に送信する。この場合、「ドアの解錠」がTrigerとなり、Actionとして「カメラ起動とメール送信」の動作が、アシストルールとして設定されていることになる。
IoTホームリンク「ライフアシスト」の商品構成は「専用ルーター」「ホームコントローラー」「リンクコントローラー」と「ドア窓センサー」「人感センサー」「温湿度センサー」「屋内カメラ」からなる。これら機器類に加え、専用アプリやクラウドサーバーなどのシステムがコアとして提供される。
このほかに、スマートスピーカーやスマートフォン、各種家電機器や住宅設備など、住まい手次第で組み合わせ、アシストルールの設定が可能だ。家電機器はECHONET Liteに対応していれば、基本的にどのメーカーの製品でも採用することができる。具体的な対応可能機種については、一覽可能なホワイトリストを近日公開する予定だ。
様々な場面でのホームオートメーションを可能にするアシストルール機能だが、一方で「住まい手によっては目的を絞り込めず、具体的なルールをつくることができない、設定できない可能性も考えられる」(小平氏)。
そこで同社は、活用目的に合わせて、あらかじめ機能をまとめたパッケージ商品を用意する。2018年4月に予定している本製品の販売開始時には、「おうちモニタリング」「ご家族みまもり」「親孝行みまもり」の3パッケージを選択可能とする。
専門知識不要、住宅会社は設置するだけ
近年、関心が高まりつつある住宅分野でのIoT技術だが、住宅事業者がこれまで経験してこなかった業務負担が問題視されている。システムの設定や住まい手への説明、メンテナンスやトラブルへの対応など、誰がどのように負担するのか―。これをクリアできなくては、中小の住宅事業者への普及は望めない。
IoTホームリンク「ライフアシスト」の場合は、導入にかかる設定をすべて完了した状態で提供。LIXILが販売する機器のペアリングを、同社が行い出荷する。住宅事業者は適切に設置するだけだ。
全国の住宅事業者との連携で普及を促進
本事業は、まずLIXILが販売する「スーパーウォール工法」の全国加盟店から組織したSW会を中心に、同社の断熱パネルを使用する住宅事業者から展開を始める。
「将来的には、よりオープンに、全国各地の住宅事業者に使ってもらえるようにしたい」(山本氏)。

地域の住宅事業者と協働で、本事業のコンセプト住宅を2019年度までに50棟建築する。LIXILがアンケート調査と利用データの確認を実施し、同社の研究・開発部門が取得したデータの検証を行うという。検証するのは次の7テーマだ。
- スマートフォンによる施解錠履歴の確認回数および掛け忘れ回数
- 不審者侵入のメール通知件数と録画件数
- 一括操作の利用回数及び、利用前後の時間短縮効果
- 帰宅通知のメール件数
- 室内状況確認の閲覧回数
- アシストル―ル機能の利用状況と設定内容
- 利用満足度、利用による懸念事項の確認。普及性の確認
今後の展開について山本氏は、「全国の住宅会社との連携で、あらゆる住宅の新築時からIoT普及に貢献できるのが当社の強みだ。住宅会社や消費者のIoT住宅に対する関心・理解度を深める活動を展開してゆく」と意気込みを語る。